私たちが働いた稼ぎを横取りする「職場の独裁権力」を倒すには

会社を所有すべきなのは、本当は誰なのか
ヤニス・バルファキス プロフィール

なぜ私たちの生活は持続不可能なのか

「どれほどたくさん市場を設計するか刺激しても、どれほど新しい税金を次々に導入しても、いったん「資本主義株式会社」が私たちの未来に賭けたなら、私たちに未来はない。なぜ今日の私たちの生活は持続不可能なのか。それは、あなたのような頭のいい人間が株の保有を擁護し続けるからよ。未来の利益の流れを買う権利が、歯止めのきかないテクノストラクチャーを勢いづかせ、抑制なきものにしてしまうことくらい、あなただって本当はわかってるくせに。お手柄ね、お嬢さん。あなたたちのおかげで、彼らはますます熱心に人類の破滅に取り組んでいる!」

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「資本主義について、あなたがどうおっしゃろうと」イヴァが切り返す。「それ以外のどんな選択肢も、資本主義には及ばないことが証明されている。だからこそ、ほとんどの人は資本主義を必然的なものと考えている」

「かつては王権神授説もそうだった。だけどその思想も廃れた」コスタが言った。

「ええ、確かに」とイヴァ。「だけど、フラット組織と取引不可能な1人1株で、本気でうまくいくと思ってるの? まさかそれで本当に、人類を救うグリーン革命を起こせるとでも?」

ユートピアを台無しにするのはいつも男たち

「さあ、わからないな、イヴァ」コスタは認めた。「だけど僕には、コスティが報告してくる世界が、僕たちにとっても戦いとる価値のある、現実的なユートピアの姿にいちばん近いように思えるんだ」

「どんなユートピアにしろ、私の問題がなにか知ってる、コスタ?」アイリスが険しい口調で訊ねた。「男どもよ! すばらしいものになりそうなものがなんでもそうであるように、あなたたち男どもはユートピアを横取りして、ぞっとするものに変えてしまう。それ以上に最悪なのは、ほとんどの女性が、その過程で男どもの言いなりになってしまうこと」

イヴァはただ黙っていた。

イヴァにとって、資本主義のない市場はさほど無謀な考えでもなかった。それどころか、現実問題として、それがどんな結果をもたらすのかについて懐疑心は拭えなかったにせよ、悪くない考えだと思った。だが倫理的な異論もあり、その問題をふたりにぶつけた。