世界的経済学者が描く、資本主義の怪物が破壊した本当に大切なもの

地球という惑星の正気を取り戻す思考
ヤニス・バルファキス プロフィール

地球という惑星の正気を取り戻すには

こうして、テクノストラクチャーは再び支配力を掌中に収めたんだ。そして、将来価値を略奪する彼らの試みは新たな高みに達し、2008年にまたもや世界金融恐慌を招いた。今回は一掃すべき世界戦争の瓦礫はなく、中央銀行が大量のお札を刷り、そのぴかぴかの公的資金を注入されてテクノストラクチャーは素早く復活した。だけどその頃にはウイルスはその宿主をひどく病気にして、みずからの環境を略奪してしまい、完全な回復は望めなかった。肥大して、炎症を起こしたテクノストラクチャーは、新たな流動性を真の生産力に、質のいい仕事に、カーボンニュートラルな経済に転換できなかった。

 

その状況の恐ろしい危険を身に沁みて理解するためには、環境の略奪によって発生した2020年の本物のウイルスが必要だった。それでもなお、その時もまた、各国政府はテクノストラクチャーに巨額の資金をつぎ込むことが妥当だと考えた。彼らがまるで救命ボートででもあるかのように、病気の原因にしがみついたんだ。

2023年になる頃には、テクノストラクチャーと寡頭政の支配者たちは、この地球を─制御不能に陥った環境危機と社会危機に捕らわれたこの惑星を─ますます牛耳っていた。だからこそ僕が危惧するのは、地球という惑星の正気を取り戻すためには、株の取引を禁止するだけでは不充分ではないか、ということなんだ」(翻訳/江口泰子) →次回に続く

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