富裕層が債券投資を好む理由
じつは、スイスの富裕層は債券投資が大好きです。

すでに数億円の資産を保有している富裕層は、わざわざリターンが未確定な株式投資に多くの資産を注ぎ込まなくても、リターンが確定している債券投資の利息収入を、着実に積み重ねていく堅実な投資戦略を好む傾向があります。
なぜなら、私たちは誰しも損をしたくないという気持ちがあるからです。
人間は、同規模の利益と損失を比べると、利益による喜びよりも損失による悲しみを1・5倍〜2・5倍も感じます。これを、行動経済学ではプロスペクト理論と呼んでいます。
スイスの富裕層にとっても、資産を増やしたいという気持ちより、資産を安全に保全したいという気持ちのほうが強いのです。
もうひとつ、富裕層に債券投資が人気の理由があります。
それは、相場の乱高下に一喜一憂する必要がないということです。株式投資をしていると、株価の値動きが気になってしまい、ついついパソコンの画面と睨めっこをしながらチャートを研究したりして、日々の値動きに翻弄されてしまうことがあります。
しかし、富裕層にとって、毎日大きく変動する株価をチェックする時間はありません。彼らは投資が本業ではなく、会社経営をしたりフリーランスとして働いたりと、自分自身の仕事を持っているからです。
また、すでに現役生活を終え、老後生活を楽しむ人々には、株価を気にするよりも趣味や家族との時間を大切にするという考え方があります。そのため、リターンが未確定な株式よりも、リターンが確定している債券を好むのです。