【奇跡の戦争秘話】重慶上空で「戦火を交えた宿敵」と再会した“零戦パイロット”

58年の時を経て再会
神立 尚紀 プロフィール

平成23(2011)年3月11日、東日本大震災で陸前高田市街地のほとんどが津波に流された。私は三上に電話を試みたが、繋がらない。安否不明の不安なときが過ぎ、ようやく連絡がとれたのは2週間後の3月25日のことだった。

三上は、奇跡的に家族とともに無事だった。

電話口に出た三上は、

「いやいや、声が聞けて涙が出ますよ。心配くださってる皆さんに宜しく。頑張るよ」

あの日、三上は、予定の外出先に出るのが遅れ、偶然、高台の自宅にいて難を逃れたのだという。教材会社の社屋は流されたが、ほどなく、自宅敷地内で業務を再開した。

 

かつて三上は、

「人生に対し、死ぬまでファイティングポーズでありたい」

と、私に語ったことがある。震災のあと、三上の無事な声を聴き、この言葉を思い出したとき、「不死鳥」の三文字が、零戦の姿とともに、ふと頭をよぎった。

令和元年5月11日、三上一禧氏の102歳の誕生日会。初空戦当時を再現した零戦の模型を前に(撮影/神立尚紀・模型製作/水間守)

平成29(2017)年5月11日、三上は満100歳の誕生日を迎えた。令和元(2019)年、102歳の誕生日を祝いに陸前高田に駆けつけたとき、三上は私の姿を認めるなり

「あなた、しばらく見ない間に歳とったねぇ」

と言い、上機嫌で昔の話をした。かつてのように筋道だてたインタビューはできないが、零戦を駆って戦った80年前の若い日の思い出が、いまも最大の心のよりどころになっているようだった。今年104歳になった三上は、零戦搭乗員の長寿記録をなおも更新中である。(本文中敬称略)

定価:1430円(税込)。講談社ビーシー/講談社。 真珠湾攻撃に参加した隊員たちがこっそり明かした「本音」、ミッドウェーで大敗した海軍指揮官がついた「大嘘」など全11章の、これまで語られることがなかった太平洋戦争秘話を収録。

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