ベストセラー経済学者が語る「銀行が必要なければ、資本主義もいらない」

資本主義の実態は空っぽの「架空資本」
ヤニス・バルファキス プロフィール

実態がないマネーだけの膨張

投資銀行についても同じことが言える。投資銀行がなにをしているのか、本当に理解している人がどれほど少ないことか。名前こそ投資銀行だが、彼らは投資しない。少なくともスキルや設備、ソーラーパネル、病院、あるいは有形資産価値を持つものに投資することはない。彼らはその並々ならぬエネルギーと手腕を駆使して、負債と株式とを組み合わせた複雑な取引を、まるで魔法のように生み出す。

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まず、彼らは悪魔のように込み入った負債をつくり出す。リーマン・ブラザーズでイヴァも関与していたプロセスだ。次に、彼らはそのいわゆる「負債性金融商品」を、年金基金などの機関投資家に販売する。機関投資家は積立金などに対するリターンを求めて、これらの金融商品の値上がりに賭ける。そして投資銀行は、それらの金融商品を売って集めた資金をすべて顧客に貸し付ける。すると顧客はその資金を元手に、選別した銘柄に巨額を投じる。それが株価を押し上げる。

株価が高騰すればするほど、負債性金融商品と株式を買う顧客が殺到する。この負債性金融商品と株価の相互作用はクローズドサークル(閉鎖式循環)であり、ほとんどの市民が苦しい生活を送るいっぽう、実体経済とマネーの世界が乖離し、最終的にはごく一部の巨大ファンドが、ほぼすべてを独占するという事態が起きてしまう。

だが、その方程式から「売買可能な株式」を取り去ると、構造自体が消滅する。コスティの世界で投資銀行に残された役割は、彼が働くような企業に融資する人たちの手伝いをすることだろうと、コスタは考えた。そしてコスティの世界には、確かにそのような仲介業者も存在した。だが、個人のパーキャプ口座から直接、企業に融資できるために、仲介業者の影響力はほぼゼロに等しかった。コスティは中央銀行のデジタル決済システムにアクセスして、誰に対しても自由に、簡単に、高い透明性を保ったまま資金を融資できるのだ。仲介機能を持つ人気のアプリも多く、そのうちのどれかを使えばよかった。強大な力を振るう仲介業者として銀行が暗躍する余地は、もはや残されていなかったのだ。

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