第一回ジャクシュアリーアワード、10の視点の「感性」において、部門賞を受賞したサントリーのウイスキー事業部。他を圧倒する感性の3つの発露について、ここに解き明かしてみた。

●JAXURY委員会のメンバー
前野隆司さん(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科教授)、小山薫堂さん(脚本家、放送作家)重松理さん(ユナイテッドアローズ名誉会長)、奈良宗久さん(裏千家今日庵業躰)、齋藤薫さん(美容ジャーナリスト、エッセイスト)、森岡弘さん(ファッションディレクター、スタイリスト)、隅谷彰宏さん(テイラーアンドクロース株式会社 代表取締役)、川合寛妥さん(株式会社赤坂柿山 代表取締役社長)、吉岡久美子(講談社 JAXURY編集責任)

●JAXURY「10の視点」とは……

Japan‘s Authentic Luxury=略称JAXURYを見極めるための視点。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科オーセンティック・ラクシュアリーラボの研究の結果導き出された。この視点をもとにJAXURY委員会は、2021年3月25日にフラウ5月号発売と同時に本誌および綱町三井倶楽部で100のJAXURYブランドを選出発表し、表彰が行われた。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81726

1.クラフトマンシップ 2.感性 3.信頼 4.本来感 5.唯一無二 6.美 7.日常的な上質さ 8.神話・歴史 9.幸運・僥倖 10.利他 (詳細は以下) 

感性 その1.
人の心に沁みいる言葉を持っていること

[忘憂のもの][天の美録][掃愁草][玉はばき][般若湯][黄雲][鬼除け][三つの友][竹の葉][笹の露]……全て、酒を意味する言葉である。酒の文字を入れずにこれだけの表現をさせる、そこに酒の神秘性がふわりと香る。すでに酒の銘柄になっている言葉もあるが、もともとは、時に遠回しに、時にうやうやしく、酒が持つ不思議な力までを表現した趣深い言葉たちである。

とりわけ、「忘憂のもの]は“憂いや心配事を忘れさせてくれるもの”、また、[掃愁草]は“愁いを払い除いてくれるもの”といったように、より情緒的な意味を持つ。有史以前に最初の酒が発見された時から、それは最古の“向精神薬”という役割を担ってきたわけで、奥深くで心に寄り添うものだからこそ、情趣を含んだこうした言葉が多くなるのだろう。

それにしても、酒にまつわる日本語の豊富さ饒舌さ! いや、酒のつく熟語となると、悠に100は超えてしまう。月見酒、雪見酒、花見酒、菊を見ながら菊見酒、菖蒲を浸して菖蒲酒、紅葉を浮かべて紅葉酒と、花鳥風月を遊ぶような風雅な表現が溢れている。もしこの世に酒がなかったら、風流という日本的な美意識は育たなかったのではないかと思うほど。

ちなみに、香水の本場と言っていいフランスには、“芳しさ”を表現する形容詞が目立って多いと言われるが、同じように酒にまつわる叙情的な言葉が日本語に格別に多いのは、日本人がいかに酒を美しく味わい深いものとして捉えようとしているかの証だろう。四季折々はもちろん、花の種類にまでこだわりながらの一献。まさしく“虫の音も風情と感じられる日本人”ならではの、嗜み方なのかもしれない。

大きさや形の異なる蒸溜釜を使い分けて、原酒の香気成分は様々に変化。そして材質や容量が異なる樽で寝かせることで原酒はそれぞれのウイスキーとして育っていく。

そうした日本人の、酒への深い想いを意外にも“洋酒”で表現し、花鳥風月との静かな交わりを叶えたサントリーウイスキーの世界観は、見事と言うしかない。

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20年30年40年たっても、脳裏に刻み込まれて消えることのない惹句があるなら、その中のいくつかは紛れもなくサントリーウイスキーのCMコピーだったりする。
「何も足さない、何も引かない」(山崎)
「恋は、遠い日の花火ではない」(オールド)
「すこし愛して、ながく愛して」(オールド)
言葉と酒は無関係のようでいて、じつは深いところで言葉が酒の心地よい伴奏のような関係にある。ワインの場合を思い出せばわかるように。そういう意味でサントリーは、企業として伴奏者としての才能に優れ、言葉に言霊を宿らせ操ることができる、ずば抜けた感性の持ち主であると感じた。