夫の携帯がつながらない

勿論わたしからも夫の会社や携帯電話に電話をかけてみた。しかしつながらない。再びベルが鳴り、慌てて電話をとってもそれは、やはり同じように心配して電話をかけてきた知人や友人からのものばかり。

長男には「ごめんね、今日は保育園には行けないよ。ぶーちゃ(夫の愛称)のビルが大変なことになったみたいなの。ぶーちゃから電話がかかってくるかもしれないからお家にいなくちゃ」そう話し、電話をしていない時は、食い入るようにテレビの映像を見守った。

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夫は80階勤務、飛行機がぶつかったのはビルの真ん中あたりに見えた。後に実際激突したのは80階付近、夫のオフィス直撃と分かったが、その時わたしにはそう見えていた。きっと今まだ逃げているに違いない。階下に飛行機がぶつかった。エレベーターはきっと動いていない。徒歩で80階を降りるのに、どのくらい時間がかかるのだろう。火にまかれたりはしないだろうか? 早く! とにかく早く逃げて! そう祈りながらテレビを観ていた。そして何もわからないまま小一時間がすぎた頃、まさかの出来事が再び起こる。夫の勤めるサウスタワーが崩壊したのだ。

崩れるビルから逃げる人々の姿も報じられた Photo by Getty Images

これを観た時は、まさに絶叫だった。自分でも、自分からこんな声が出るのだ、とびっくりするほどの、嗚咽のような、叫ぶような鳴き声が出て、

「ぶーちゃが死んじゃった、どうして、どうしてー!」

泣き叫びながら、部屋中を転げまくった。

母親の狂ったような姿を見て、長男は固まり、次男はもらい泣きで同じく絶叫。家中が壮絶な状態になった。