「本当の女性活躍推進とは、キャリアと恋愛・結婚を両立できてこそ成り立つものではないか」AI恋愛ナビゲーションアプリ「Aill(エール)」を運営する株式会社Aill最高経営責任者である豊嶋千奈(とよしま・ちな)さんはいう。そして「働く独身男女が抱える恋愛に関する悩みは、日本が抱える社会課題にもつながっているのだ」とーー。

「20代半ばで結婚するつもりだった」
理想と現実のギャップ

大学卒業後は、大手製薬企業のトップ営業として輝かしいキャリアを積んできた豊嶋さん。営業職として売り上げを伸ばすことはもちろん、それ以上に医療従事者の一員として、いかに地域の医療に貢献できるのかをひたすら追求。29歳で女性幹部候補生に選出されるほどの成果を残し、心身ともに労力を注ぎ全身全霊で挑み続けてきた。

「Aill」創始者の豊嶋千奈さん。オンライン取材だったが、画面越しからイキイキとしたエネルギーが伝わってくるほど、はつらつとした魅力的な女性だった 写真/Aill提供

「入社して3年くらいは、仕事から帰ると疲れ果ててバタンキュー。だんだん要領を得るにつれ余裕は出てきましたが、それでも寝食以外はほとんど仕事に費やしていましたね。日常からアイデアを得るタイプなので、休みの日も仕事のことを考えてしまったり……。つい恋人よりも仕事を優先し、うまくいかなかったこともありました」

入社当初の豊嶋さんが思い描いていた人生設計はこうだ。

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「最初の3年間は仕事に全力投球。26歳くらいで結婚・出産、育休を経て復職するぞ!」

けれど現実は違った。目の前の仕事と真剣に向き合い、がむしゃらに働いているうちに、気づけば理想とは逆方向のレールを猛進。29歳のとき、女性幹部候補生に選出された。

「会社と結婚するなんて絶対にイヤ!」

「プライベートも充実させるはずが、なぜこうなってしまったんだろう?」

「もしかしてこんな状況に陥っているのは私だけ?」

これまでの仕事ぶりが評価されたことは喜ばしいこと。けれど、願ってもいない不本意な現状にモヤモヤを抑えきれなくなった豊嶋さんは、仲間を探しに行動にでた。友人や当時通っていたMBAの大学院でのつながりを介し、同世代の働く女性約70人にヒアリング調査を実施したのだ。そうすると、9割以上の人が「仕事だけを望んでいない」つまり「プライベート(恋愛・結婚)の充実」を求めていることが分かった。

中には、「生涯独身として、仕事に人生を捧げるつもりだ」という人もいるだろう。本人がそう望むのなら、それは紛れもなく素敵な生き方だといえる。けれどヒアリング調査の結果では、そのような回答をした人はほぼいなかったという。

「こんなにも真面目にがんばって働いている女性たちが、心から幸せを感じられない世の中なんておかしい!」

Photo by iStock

働く独身女性の本心に触れ、そう強く感じた豊嶋さんは、次に働く独身男性にもヒアリング調査を行った。同じく、同世代の友人、知人を辿り約60人から回答を得た。

「女性がこんなにもつらい思いで生きていることを男性は知っているのかと(笑)。けれど、男性は男性でつらい悩みを抱えていたんですよね。会社では、女性活躍推進の影響も手伝ってか、女性の昇進が増えたことで、モチベーションの低下を感じている。自分が思っているよりも評価をしてもらえていないと感じた男性は、どんどんフラストレーションが溜まっていきます。

男性は女性よりも、自身のアイデンティティを仕事で見出す傾向があるんですよね。とくに営業職などに多い成果主義の男性は、女性よりも『失敗したくない』という思いが人一倍強い。それは仕事だけでなく恋愛にも言えることで、『失敗するくらいなら何もしない方がいい』そう考える男性が多いことも分かりました」