菅首相「総裁選不出馬」を嬉々として報じる中国メディアの上から目線

本当は日本が羨ましいのかもしれないが

『環球時報』のふてぶてしい社説

このところ、日本の政界のニュースなど、とんと出なかった中国メディアが、9月3日に菅義偉首相が「総裁選不出馬」を表明して以降、「日本の政変劇」報道に沸いている。それこそ百花繚乱(百鬼夜行?)のごとく、様々な視点から論じているのだ。

中国では、自国の政治について述べるのは御法度だ。正確に言うと、「礼賛すること」のみ許されている。それだけに、久々に「活発な政治論議」ができる自由を噛み締めているかのようにも思える。以下、見ていこう。

Gettyimages

まず、菅首相が「総裁選不出馬」を発表した当日夜、早くも「戦狼(せんろう=戦うオオカミのような)メディア」として知られる中国最大の国際紙『環球時報』が、「ふてぶてしい社説」を出した。タイトルは、「日本の誰が菅義偉に替わろうとも、中国は応対していける」。下記に全訳する。

〈 日本の菅義偉首相が金曜日に突然、次期自民党総裁選への参加を放棄すると宣言した。これは、同時に日本の首相を続ける機会を放棄するという意味であり、日本政界に新たな衝撃波が起こっている。菅義偉は昨年9月、安倍晋三に代わって首相になった。衆議院は11月28日以前に占拠を行うため、菅の首相任期は長くて1年2ヵ月。多くの人が、日本はまた首相が頻繁に入れ替わる政治動乱期に入るのではと疑っている。

菅義偉が総裁再任選挙を放棄した根本的な原因は、大まかに言えば「大勢は去ってしまった」と自覚したからだ。実際、自民党内の各派閥の支持を見ると、菅が総裁に再任される可能性はすでに相当低かった。自民党の幹部人事の調整も挫折し、もはや再任が巡ってくることは難しいと判断、「激流での勇退」あるのみだった。 

首相を担っていたこの一年、菅義偉の最大の敗北は、新型コロナウイルスの克服に失敗したことだった。日本は9月1日の新たな確定感染者数が、2万31人。日本社会の新型コロナウイルスへの危機感は、欧米社会よりもはるかに大きい。そのことが、東京オリンピックの順調な開催がもたらす喜びを圧倒してしまったのだ。

ウイルスの蔓延に伴い、日本経済は沈滞を余儀なくされ、菅義偉の支持率は、もはや持ちこたえられないところまで来ていた。その結果、菅義偉が金曜日に次期総裁選不参加を表明するや、日本の株価は大幅に上昇したのだ。

 

岸田文雄元外相、高市早苗前総務相、河野太郎行革担当大臣、石破茂元自民党幹事長が、自民党の新総裁及び新首相の熱き候補者だ。日本の困難は重く、困窮を抜け出す実際の動力に欠けている。政治的な団結にも欠けていることから、新首相もまたうまく事を運べず、政治の新たな動乱期に陥っていくという予測も、滑稽な話ではない。

菅義偉のこの一年、中日関係はひどいものだった。中日関係は2018年に、「正常に戻った」と評されたが、その高みから滑り落ち、今日の深い谷に至っている。誰が自民党新総裁並びに首相になろうとも、中日関係が「大反転」することは非現実的だ。これは、日本国内で中国の印象が悪化していることに加え、国際的にアメリカの中国抑止戦略も、日本に大きな動力となっており、日本内外ともに新たな対中路線を形成しようという条件は起こっていない。

それでも、中日のパワーの局面は、すでに歴史的変化が起きている。(2008年の)北京オリンピックの時、日本のGDPはまだ中国の前方にいた。だが2020年、中国のGDPは日本の約3倍だ。これは大体、20世紀末の中国大陸と台湾の経済格差だ。もっと細かく言えば、中国の年間の自動車販売台数は、日本の5.5倍で、高速鉄道の距離は日本の新幹線の13.7倍だ。こうしたすべては、日本の強硬な対中政策の地政学が含んでいる変化だ。

中日は、短期的に感情が近くなるというのは難しいだろう。日本は真にアメリカに服従している。連続して原子爆弾を落とされた恨みも、アメリカ軍に占領された屈辱も、自己の中で和解した。中国は、唐の時代のように日本より全面的に先進国にならない限りは、日本が中国に「服従」することはないだろう。また短期的には、中国との「相互尊重」の窪みに行き着くことはないだろう。日本は長時間をかけて、中国とは「別々」の道を歩むことになる。

ただし日本はすでに、中国にとっての根本的な脅威となることは、非常に難しい。日本の長期的地位と立ち位置は、「アメリカの悪い駒」だ。この一点は、中国ははっきり見ておかねばならない。中国は日本との関係を、中日のパワーバランスの現実から始め、日本社会の対中意識を正確に把握し、日本の脅威を客観的に評価し、この隣国とどうやって向き合っていくかを決めて行かねばならない。

中日の経済貿易量は非常に大きく、これが両国関係の最も実質的な内容と見なされている。たとえ日本で誰が次に首相になろうとも、日本の対中強硬の声はあまり変わらない。両国の経済貿易関係の互利の状況と規模が、打撃を喰らう可能性も大きくない。その他、日本が挑発し、中国と対決するということもおそらく不可能だ。このことは中国が事実上、中国が寛容に対日関係に対処していける余地があることを示している。

そのため、日本の次期首相が対中強硬策の習慣に基づいて進んでいくからと言って、中国はそれがもたらす挑戦に対処していく能力を持っている。中国はますます、日本よりも強大になっていく。両国関係が悪化しても、より大きな損害を受けるのは、もちろん日本の方なのだ 〉

 

何とも「上から目線」のところが、王毅外相のようだ。「誰が次期首相になっても、中国に吠えることはできても、何も手出しできないだろう」と見透かしているわけだ。また経済貿易問題には触れているが、尖閣諸島問題にはあえて触れていない。

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