「親ガチャ」という言葉が、現代の若者に刺さりまくった「本質的な理由」

若年層に拡がる宿命論的な人生観
土井 隆義 プロフィール

これまで私たちは、自らの努力で獲得した能力を重視する社会を築いてきた。学歴を含めた資格が評価されてきたのも、その能力を証明するものだったからだろう。しかし生得的な属性からの解放は、いったい自分は何者なのかという不安をかき立てるようにもなった。

とくに昨今では、能力や資格の評価基準も容易に移ろいやすく、自分を指し示す安定した物差しとはなりえなくなっている。社会の高原化にともない、明確で安定した実現目標を措定することが困難になったからである。だとすれば、評価の動揺しやすい社会的能力や資格よりも、むしろそれらを規定するとみなされる生得的な資質や属性に重きを置き、そこに自分の人生の拠り所を置こうとするようになってもおかしくはない

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したがって、このような人生観は、現代社会の特徴の一つでもあるアイデンティティの揺らぎを少しでも抑え込みたいという願望の表われともいえる。生得的な属性は、改変が困難で固定性が強いがゆえに、見方によっては安定した基盤とも感じられやすい。人間関係を内閉化させることで、居場所の確保とその安定化を図ろうとする心性とまったく同じである。

もちろん、そこに生育家庭の経済状態が影響していないわけではない。むしろ近年はその比重が高まっている。しかし、ここで留意すべきなのは、経済格差の固定化が進む中で、それもまた不変不動の生得属性の一部と捉えられがちになっているという事実である。

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