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「親ガチャ」という言葉が、現代の若者に刺さりまくった「本質的な理由」

若年層に拡がる宿命論的な人生観

不満感から不安感へ

親ガチャという言葉が示唆するように、今日の日本社会では経済格差の固定化が進みつつある。しかしその一方で、とくに若年層を中心に生活満足度や幸福感は高まっている。矛盾しているかのように見えるこの二つの現象の裏には、日本社会がすでに山登りの時代を終え、いまや高原化しているという実情がある。経済格差の固定化もその帰結の一つであるし、期待値が低下してきた理由の一端もここにある。

しかし、近年の満足感の高さの背後にあるのは、このような成長率の変化だけではない。そこには人間関係の変化もある。そびえ立つ山を見上げながら登っていた時代には、明確な理想や目標を掲げやすかったが、高原を歩くようになった現在では、ただ闇雲に進んで行けるような行先を措定しづらい。それが人間関係のあり方に変化をもたらしているのである。

明確な目標を掲げ、その頂上へ向かってひたすら山を登っている最中には、一緒に歩んでいる仲間がすぐ隣りにいたとしても、その視線はいっこうに気にならない。みながそろって眺めているのは山の頂だからである。

しかし、その山を登りきって高原地帯へ足を踏み入れた途端、隣りを一緒に歩いている仲間の視線が気になり始める。周囲を見渡してこれからどこへ向かって歩めばよいのか分からなくなり、では隣りの人はいったいどこを見ているのか、どこへ進もうとしているのかと、互いに探り合うようになるからである。ここに、高原社会に特有の不安が生じてくる。その不安は、高原化がある程度進んだ後に誕生した若年層のほうが大きいと考えられる。

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近年、若年層の幸福感が増している大きな理由としてしばしば挙げられるのも、この世代で突出している人間関係の満足度の高さである。高原社会の訪れとともに、彼らの人間関係は、かつてほど組織や制度にきつく縛られなくなり、不本意な関係を強制されることが減ってきた。個人の好みに応じて自由なつながりを築きやすくなり、局面に応じてそれを切り替えることも容易になった。

山頂を目指していた時代には、人間関係は固定的なほうが効率も良かったが、高原地帯を歩み始めると、人間関係は流動的であるほうが様々な状況に対処しやすい。近年のネット環境の急激な発達が、この傾向をさらに後押ししている面もある。

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