格差拡大、貧困増大…それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由

若年層に拡がる「宿命論」的な人生観
土井 隆義 プロフィール

不満を抱えた高齢層

日本青少年研究所が実施した「高校生の生活意識と留学に関する調査」によると、「現状を変えようとするより、そのまま受け入れたほうが楽に暮らせる」と答えた人は、1980年には約25%にすぎなかったが、2011年には約57%へと倍増している。

このような心性は、若者からハングリー精神が衰えたと批判的に捉えられることも多いが、現状を変えるためのハードルのほうが上がったと捉え直すこともできる。かつての若者たちが、見上げるような急な坂道を登り続けることができたのは、現在の若者たちより努力家だったからではない。後ろから強い追い風が吹き上げていたからである。社会全体が底上げされ続けていたからである。

たとえば、いま列車に乗っているとしよう。動いている列車と止まっている列車では、そのなかで同じ距離だけ前方に歩いても、スタート地点からの移動距離は違う。成長期の日本では社会全体が向上していたため、その勢いに乗ることで、わずかな努力でも現状を大きく変えることが可能な場合が多々あった。しかし現在の日本では、たとえ努力したとしても、現状はなかなかそう大きくは変わらないものへと変質している。このような時代の変化が、今日の若者たちの期待値を低減させている。

また、若年層ほど大幅な増加ではないせよ、その親の世代に当たる中年層でもやはり生活満足度は上昇傾向を示している。彼らもまた「子ガャ」という言葉を使うように、このような時代の空気をある程度は共有しているからだろう。他方で、高齢層だけは変化していない。かつての高度成長期に多感な思春期を送った世代であるため、その心性をなかなか変えることができず、当時の高い期待値をいまも保ち続けたままだからだろう。それが現在の社会状況と合致しなくなっているのである。

実際、若年層と中年層においては、生活満足度の上昇とともに刑法犯も減少している。ところが高齢層においては、その人口規模の拡大では説明しきれないほど刑法犯が増えている。昨今は暴走老人などと呼ばれることも多いが、不満感の塊のような高齢者がこの世代に急増しているのは、時代の変化に世代の精神が追いついていかず、そこに大きな落差が生じているからだろう。

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