格差拡大、貧困増大…それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由

若年層に拡がる「宿命論」的な人生観
土井 隆義 プロフィール

私たちの不満感は、このように期待値と現実の落差から生まれる。だとしたら、余計な理想など最初から描かず、期待値がそもそも低ければ、現実への不満もそれだけ低下することになるだろう。このような観点から現在の若年層を眺めてみると、その生活満足度の高さも説明できるように思われる。

昭和時代の経済成長率は、ときに10パーセントを超えたこともあった。しかし、すでに高度成長期も安定成長期も終えた現在では、良くても1パーセント留まりである。このような時代の変化は、若者たちの期待値に大きな影響を及ぼしているに違いない。

建設中の東京タワー。高度成長の象徴となった〔PHOTO〕Gettyimages
 

生活水準においても、学歴においても、一世代前のレベルを上回ることを容易に実感しえた山登りの時代はすでに終わっている。ほぼ平坦な道のりがつづく「高原社会」に生まれ育った現在の若年層にとって、これから克服すべき高い目標を掲げ、輝かしい未来の実現へ向けて日々努力しつつ現在を生きることなど、まったく現実味のない人生観に思えてもおかしくはない。彼らが眺めているのは、見上げながら登りつつある山の頂ではなく、その頂きの向こうに延々と広がるなだらかな地平だからである。

日本社会が高原化してすでに20年を超えた現在、このような人生観は彼らの親の世代にも当てはまるようになっている。しかし、彼らの親の世代はそのまた親の世代の学歴や収入を乗り越えることが割と容易だった。ちょうど時代の転換点の直後に位置する世代だからである。

そのため、親の学歴や収入を上回ることができない現在の子どもたちに接したとき、なんとも不甲斐ないと感じてしまう。このような状況を反映して、学生たちの中には「子ガチャに外れた」と親から言われている者も結構いるようである。親の期待どおりにいかない子どもの人生をこのように嘆かれたのでは、自分の責任でそうなったわけではない学生たちがなんとも気の毒である。と同時に、親の世代もまたこの言葉を発するようになっているという現実は、子どもの世代ほど極端ではないにせよ、彼らもまた同様の感性を持ち始めていることを物語っている。

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