「彼らは決してモンスターじゃない」

不登校相談48年のキャリアを持ち、今も子ども相談室「モモの部屋」で相談活動を続けている内田良子さんは、小山田氏などいじりやいじめに対し敏感でない人たちについて「彼らは決してモンスターではない。日本の縮図です」と言う。

「いじめは複雑です。いじめられた経験を持っている人が、“傷を回復する方法”としていじめる側にまわることがあるのです。この夏、さまざまな方々が過去のこと(いじめや差別)で責めを負いましたが、彼らのそれまでの人生やバックグラウンドを知らないままでは意見できません。そういった方が過去においていじめを受けていたり、差別などを受けている場合もあります。全容を知らないのに、安易に論じるのは危ういと思います」

-AD-

内田さんによると、犯罪の加害者が虐待家庭で育っていたケースはしばしばあるという。無論、被虐待児だから許されるものではないが「そこを切り離して論じることの危うさを、みなさんに知ってほしい。不始末を叩いて個人の問題にしては、本質的な解決にはならないのです」と内田さんは言う。

「今回は大人のニュースですが、子ども期のいじめや差別は学校を舞台に起きています。私は多くの相談を受けてきましたが、いじめが生まれる教室は教師が権力的です。評価や管理、競争があるところにいじめは生まれます。よって、教育そのものを見直さなくてはいけない。なのにそれをせず、学校はどの先生が担任をやっても保護者からクレームが来ないよう教員の平準化を進めています。教員が自分の判断や裁量で人間的に子どもたちとかかわると、教員によって差が出るから不公平になるというわけです」

子どものいじめや暴力を学校で問わずして家庭や親の問題に矮小化し「家庭に原因を押し付ける構造が問題だ」という内田さんの意見はうなずける。私も取材で、多くの共働きやひとり親家庭の母親が「親の愛情不足」と言われ悩む姿を見てきた。教育委員会や自治体は「社会で子どもを育てる」と声高に叫びながら、学校の中身は逆の方向に舵を取っていないだろうか。

困っている子に寄り添う教育ができているだろうか Photo by iStock

学校や社会に働きかけつつ、「才能があればいい」「テストで百点をとったらお小遣い」といった結果主義の子育てはやめたほうがいい。そんな“見た目が痛快な子育て”が、テレビなど様々なメディアで取り上げられているのを見かける。登場する大人たちには万能感があふれている。裕福で才能あふれる人の輝きはまぶしいけれど、冷静に影の部分も想像してほしい。

子育てや教育に正解はないだろう。私たちは何が正しいかを他者に求めがちだが、それを自分の中で育むことが大切だと思う。

学校を、どの子にとっても安心安全な場にすること。その根底には、「テストの点がよければいい」「才能があればいい」という比較がないことが重要だ(写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock
島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの連載はこちら