補欠の選手がレギュラー選手の掃除をさせられて

プロ野球選手、芸能人、ミュージシャン。表出した姿が似ている彼らは、強い特権意識の持ち主に見える。特権意識は、言葉を替えれば「万能感」。とある辞書をひくと、こう書いてある。

――心理学用語で、「自分が何でもできる」という感覚を意味する語。 特に子どもの発達段階において、しばしば見られる現象である。 躁病や自己愛性パーソナリティ障害の構成要素の一つとされることもあり、自身の能力を過大評価してこの感覚を持つことによって、対人関係などに問題が生じる場合もある――

対象が子どもの場合「幼児的万能感」とも表現される。

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例えば私は、スポーツや教育分野を長く取材する過程で、以下のような話を聞いた。

小学校教諭のAさんは、休み時間にサッカーをして遊ぶ3年生の集団で、一部の子だけがいつもボールの片づけをしていることに気づいた。観察していると、掃除の班でもボール片づけをしている子どもたちが掃除をやらされていた。レギュラーの子が補欠の子にボール片づけを命じ、自分がやらなければならない掃除までも彼らに押し付けた。
なかには「奴隷36番」などと、サッカー少年団の背番号で呼ばれている子までいた。

「なんで断らないの? 嫌だって言いなよ」
先生が掃除や片づけを強制されている子どもたちに話したら、その子たちはこう答えた。

「だって、僕たち、補欠だから」

試合に勝てるのはレギュラーの上手い子たちのおかげ。たまに補欠である自分たちが試合に出ると足を引っ張ってしまう。だから、命令に従わなくてはいけないと思い込んでいる様子だったという。A教諭は「プレーするときはフェアプレーを、なんて言ってるのに、何のためにサッカーをしているのかわかりませんよね」と憤っていた。

強い選手は試合会場の外でも補欠より偉い――なぜそんな理論になるのか。それは果たしてフェアな考え方なのか。全く違うことは一目瞭然だ Photo by iStock