もっとこの一体感を味わいたい

日比谷にあるシアタークリエでの公演を終え、舞台は地方も回った。その中で希さんは、ステージ上の演者と会場のお客さんとの感情が混ざり合って、最後に一体となっていく感覚を味わい、「舞台ってなんて面白いんだろう!」と思った。

「舞台というのは、観てくださるお客さまも含めての作品なんだということが、ブロッケンの妖怪を通して感じることが出来ました。私の役割は、それまで準備していたことを思いきり表現すること。そのことを自分に言い聞かせながらベストを尽くした後に、カーテンコールで、目の前にたくさんの方の笑顔を見られた時、本当に感動したんです。『もっとこの一体感を味わいたい!』って思いました。さらに、会場によっても、空気感が全然違ったんです。生でお芝居をするというのは、毎日気が抜けないですし、不安もありましたが、今を生きている実感がすごくありました。終わった後の達成感が素晴らしくて。それ以来、舞台にハマって、積極的に舞台を観に行くようにもなりました」

撮影/山本倫子
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2017年の2月には、六本木のEXシアターで、事務所の先輩でもある寺島しのぶさんが出演する『六本木歌舞伎』を観た。演出は、映画監督の三池崇史さんだった。

「お芝居というより、“ザ・エンターテインメント”という感じで、生で音楽が演奏されて、生着替えがあったりもしました。タイトルに『歌舞伎』とあったので、事前に何か勉強しておいた方が楽しめるのかなぁと思ったのですが、何か準備をしていなくても、わかりやすく、まるでジェットコースターに乗っているような感覚で、最初から最後まであっという間で、とても楽しかったんです。」

そんな希さんが、この9月、6年ぶりに舞台に立つ。三池崇史さんが演出する舞台『醉いどれ天使』。巨匠・黒澤明監督と三船敏郎がタッグを組んで生まれた傑作映画の舞台化である。過去の舞台台本を発見したことがきっかけとなり、新たに蓬莱竜太さんの脚本が書き下ろされた。

「お話をいただいたときは、『嬉しい』という気持ちと、『相当な覚悟がいるな』という気持ちが混ざり合って、6年前の緊張感を思い出しました。ですが、この舞台に立てば、またあの感動を味わえるのかなと思いましたし、このチャンスを逃せば、ブランクが空きすぎて、二度と舞台に立てなくなってしまうかもしれないという不安もありました。そこで『やるぞ!』と覚悟を決めました」