生瀬勝久さんの言葉に救われた

今から6年前の秋のことだ。竹中直人さんと生瀬勝久さんによる演劇ユニット「竹生企画」の舞台『ブロッケンの妖怪』で、希さんは初めて演劇のステージに立った。初日、舞台袖で緊張のあまり手をブルブル震わせている希さんを見て、生瀬さんが言った。

「うまくやろうと思うから緊張するんだよ。ずっと稽古をしてきて、あとは積み重ねてきたものを舞台上で出せばいい。今までちゃんと準備してきたんだから、大丈夫大丈夫」

その言葉を聞いて、肩の力がスーッと抜けていった。

「“なんてカッコよく、素敵なお言葉!”と思い、今も心にとても残っています。初舞台のときは、脚本が倉持裕さんの書き下ろしで、実はきちんと製本された台本をいただけたのが、本読みの日だったんです(笑)。本読みには、ある程度家で読み込んでから参加出来るものだろうと思っていたので、初めて飛び込んだ世界に、『どうすればいいのだろう……?』と頭の中がハテナだらけでした」

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先輩から技を盗もうと思って役へのアプローチ方法を観察したものの、竹中さんと生瀬さんでは、やり方が全然違った。

「竹中さんはアドリブをされないタイプの方でしたが、一方生瀬さんは、『間違えても全然いいんだよ』とおっしゃっるマインドの方で。私にとって最初の舞台で、考えが真逆なお二人の背中を見て学ぶことが出来たので、『そうか、お芝居って、何が正解とかではないんだ』ということをそのとき教えていただきました」

撮影/山本倫子