社会生活的な面で言うなら、世間的にきれいとされる人のほうが就職や出世で有利になる、などですね。いまはまだ、社会全体に『美しくあらねば生きているうえで不利益を被る』という風潮があるため、人は社会で生き抜くためにもっと美しくならなくては……と思考してしまいます。
“外見軽視系マンガ広告”はそういったルッキズムを煽ることで、購買意欲を掻き立てたり、このままでは自分はダメな人間なのではないか、という思いを植え付けてしまう手法だと思います」
ルッキズムがはびこってしまう一因には、現代の社会教育の未成熟さもあると西舘氏は指摘する。
「自分から美しくあろうとする思考、それ自体に罪はないと思うのです。問題なのは、周囲からこう見られたら嫌だから美しくなろうという思考、そしてそう思わせる社会の風潮なのではないでしょうか。多感な未成年の子たちに対して、暴力やいじめはいけないことだよと教えていくのと同じぐらい、社会はルッキズムに関して大きな声で伝えていかなければいけないと感じますね」

将来的には根絶できるのだろか?
ではルッキズムへの問題意識について、日本と海外の広告業界で違いはあるのだろうか。
「海外の広告はこうした問題意識に対して自覚的になるのが早かったと思いますし、人権感覚の違いも大きいと考えています。
また、アメリカでは社会的な美の基準に翻弄されず、自分を愛する『ボディ・ポジティブ』という理念の発信が早かったのも大きいでしょう。もともとの起源は1960年代頃の肥満体型や障害を持った方の権利問題からでしたが、一般的に広まっている『ありのままの自分の身体や精神を愛す、自己肯定感を保つためのもの』という考えは2012年頃から、と考えています。
この理念にファッションブランド『H&M』やファッション誌『VOGUE』が賛同し、いち早く広告に取り入れたという背景があります。