手の震えがとまらない…
病名が診断されるまで7年

手足の震えや歩行困難、発語障害などの症状が起こる、脳内の神経変性疾患のひとつで、日本では1000人に1人~1.5人に発症する難病の「パーキンソン病」。この病気を発症した漫画家の島津郷子さんは、女性コミック誌「YOU」で『ナース・ステーション』という作品を10年以上にわたり連載。人気絶頂だった2001年に体に異変を感じ始めました。

1ヶ月に100ページほど描くこともあったという島津さんは、忙しさのあまり、食事や睡眠をろくにとらず、不健康・不摂生この上ない生活を送っていたそう。そして、右半身のだるさを感じ始め、漫画家の仕事には致命的ともいえる右手の震えも起こるように……。

その変調に悩まされ、自宅近くのクリニックから大学病院までさまざまな病院を訪れ、人間ドックを受けたり、整形外科、神経内科…と受診するも過労や心身症などと診断されます。しかし、手の震えは止まらず、腑に落ちない体の異常を感じていたため、連載を中断し、長期休養へ。処方された薬を服用する日々を過ごします。その後しばらくして、また別の病院を受診した際、「パーキンソン病」である可能性が浮上し、再び受診を繰り返すことに。そして異変を感じて7年、パーキンソン病だとやっと診断されたのです。

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闘病生活の末、2008年に脳へ電極を埋め込む手術を受け、2009年に活動を再開した島津さんは、休載していた連載を再開し完結させます。その後、パーキンソン病の発症から入院、薬物療法、脳手術までの全ての様子をエッセイ『漫画家、パーキンソン病になる。/ぶんか社』に描きます。

本作の担当編集・仲野さんは、「休載を残念に思いながら、何年か経った頃、島津先生にお会いする機会を得ました。そのときは、すでに手術を終えていて、車いすで現れ、声もはっきりとは聞き取れず、筆談を交えての打ち合わせ。本当に連載ができるのか……それが、正直な気持ちでした。でも、先生は『漫画が描きたい!』と力強くおっしゃって、連載をスタートすることに。病気や手術のこと、病院での恋の話、嫌いな先生の話(笑)など、全てをありのままに描いていただいています」と、当時のことを振り返ります。

さらに、「パーキンソン病の治療法として脳への電極埋め込み手術を描いた作品は、他にはないと思います。それはそれは想像を絶する手術ですが、一方で、入院中のほのかな恋の話など、生身の人間っぽさが感じられて、このエッセイの厚みとなっています」と見どころも教えてくれました。

パーキンソン病は現在の医学では完治することのない難病。島津さんの闘病記がコミックスになるまでの約2年、治療やリハビリを続けながらも、症状は一進一退を繰り返す日々だったそう。それでも島津さんは「連載を一度も休むことなく、締切に遅れることもなかったです」「“描く”ということが“生きる”ということなのだと強く感じました」と、仲野さんは言います。そうおっしゃる通り、闘病中の壮絶さを知るとともに、島津さんの“生”に向き合う姿勢から、生きることとは…を考えさせられる作品でもあります。