結婚や出産を機に家を購入する家庭は少なくありません。
マイホームというのは、結婚生活が生涯続くことを前提にして購入するものなので、離婚することになるとその想定が崩れてしまいます。そうすると、購入する時には思ってもみなかった問題点が浮かび上がってきて、家の存在自体が離婚の大きな妨げになってしまいます。時には、家が処分できないから離婚を我慢せざるを得なくなってしまったという夫婦もいます。
離婚をする時に困る物件とはどのようなものでしょうか。代表的な事例や物件の処理の顛末について、離婚に詳しい堀井亜生弁護士が解説します。
(※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。)
【前編】共働き「年収1300万円夫婦」が夫の不倫でまさかの離婚…共同でローンを組んでいたせいで“地獄を見た”ワケ
事例2 駅から遠い一戸建て
子どもが生まれるのを機に一戸建てを購入したC夫さん。子育ての環境と家の広さを重視して、駅から最寄り駅まで徒歩30分の建売住宅を買いました。
家庭が円満な間は、妻が最寄り駅まで車で送ってくれていたので、駅から遠くても問題はありませんでした。
しかし出産後、夫婦の行き違いが生じて妻が子どもを連れて出ていくことになりました。離婚を見据えて不動産業者に査定を出してもらいましたが、駅からの距離を理由に、購入金額よりずっと低い査定金額が出てしまいました。C夫さんは、売却して残りのローンを支払うか、ローンを払って広い家に一人で住み続けるかの二択を迫られることになってしまいました。
<解説>
物件の価値や売りやすさを決める重要な要素に立地条件があります。特に最寄駅からの距離は重要です。
購入して自分たちが住む時には、車を使うから駅から徒歩30分の家でも大丈夫と考えていても、あまり駅から遠い物件だと査定金額が下がってしまいます。
特に新築で購入した物件だと、購入時と売却時の金額の差が大きくなってしまうので、売却したとしても住宅ローンの残額の方が高くなり、売るに売れなくなってしまいます。
結局、オーバーローン状態になった足りない部分を負担したり、夫婦のどちらかが離婚後もローンを払って住み続けたりすることになります。住宅ローンは住宅を担保にしているので金利が安いですが、売却後残った額でローンを組むと一般ローンになってしまうので、金利はかなり割高になります。

<末路>
夫は家族4人で住む戸建てに離婚後も一人で住むことにしました。継続して売りに出してはいるものの、住宅ローンを全額返済できる金額での購入申し込みはありませんでした。
売却額と住宅ローン額の差額分(約1000万)を新たにローンを組んで返済しようとしたこともあるのですが、夫の収入では1000万円ものローンの審査は通らず、売ることはできませんでした。数年経って交際相手ができましたが、前の家族と住んでいる家が今もあることがネックになり、別れることになってしまいました。