ベストセラー経済学者が描く、これならあり得る資本主義終焉シナリオ

資本主義を攻撃するなら、ターゲットはここだ
ヤニス・バルファキス プロフィール

欲に目が眩み、みずからカモになった銀行

CDOの最大のセールスポイントは、その証券化商品が「安全だ」という虚構にあった。そして、CDOは多様な人や組織の多様な債務で構成されるため、複数の債務が同時に焦げつく恐れはない、という謳い文句で売りに出された。さらには、どのCDOも極めて複雑であり、どんな人にも─組成者自身にも─その価値が評価できず、販売価格については上限がないも同然だった。CDOを組成し、売却し、取引する者はただ市場の決定に委ね、市場のほうでもよくわかっていると断言できる者はいなかった。

CDOは、ジェイムズ・ボンド映画に登場する悪党の発明品だ。ペテンそのものだ。まったく不透明な紙切れでありながら、安全で大きな利益を生むように思えた。その安心感によって、CDOの組成者の予想をはるかに超える勢い─と、はるかに高値─で購入者が群がった。その高値に驚く銀行家の様子を見て、さらに注文が殺到し、価格が急騰した。

 

莫大なマネーを生み出したことから、CDOを組成した銀行家は、騙されやすいカモに不良債権を売りつけるという、本来の目的をすぐに忘れた。自分たちが売り出したCDOでほかの投資家が儲けると、指をくわえて見ていることができず、リーマン・ブラザーズのような銀行は欲に目が眩んで、みずからのCDOを買い戻し始めた。買い戻せば買い戻すほど、すでに高い価格はますます高騰し、手元のCDOの価値も跳ね上がり、ボーナスも跳ね上がった。その儲けに狂乱状態に陥った銀行は、巨額の資金を互いに貸し付け合い、より多くのCDOを買い漁った。

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要するに、銀行はみずからが仕掛けた罠に頭から飛び込んでいったのだ。そしてCDO内の不良債権がすべて焦げ付き、2008年に市場が暴落すると、投資銀行はみずから掘った底なしの穴に落ちた。その様子を目の当たりにした政治家と、連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)などの世界のおもな中央銀行は、慌てて金融機関を救済しようとした。その時だった。エスメラルダ率いるクラウドショーターズが、ストライキを呼びかけたのは。

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