夫婦同姓の苦しみ Case05:毎年結婚と離婚を繰り返す夫婦】

今年6月、選択的夫婦別姓を認めない民法と戸籍法について、最高裁判所大法廷は憲法24条の「婚姻の自由」には違反しないとする判決を下した。大法廷は2015年にも同じ判断を示したが、今回も「この種の制度の在り方は、国会で判断すべき」とし、選択的夫婦別姓を希望する人々を落胆させた。様々な世論調査では過半数が選択的夫婦別姓に賛成あるいは容認しているにもかかわらず、与党の一部の議員が反対していることから、一向に進まない。

そのせいで苦しみを味わっているカップルがたくさんいる。小学生の子どもがいる佐藤さん(仮名・都内在住)と夫もそのうちの1組だ。今年結婚12年目を迎える彼らは、毎年結婚と離婚を繰り返しているという。佐藤さんに詳しく話を聞いた。

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「結婚前には選択的夫婦別姓が制度化されると思っていた」

佐藤さんは大学時代に授業でジェンダー平等やリプロダクティブ・ヘルス/ライツを学んだことをきっかけに、ジェンダーにまつわる問題に関心をもつようになったという。

佐藤さんが大学に入学した1996年に起こったある出来事もそれを後押しした。法務省が選択的夫婦別氏制度導入を答申し、法改正が目前に迫っていたにもかかわらず、選択的夫婦別姓が導入されなかったのだ。法務省が答申したら法改正がされるのが通例だったので、この決定は“異常事態”といってもいいものだった。

「1996年に法制審に選択的夫婦別姓が通ったとき、新聞は一斉に制度化されると報じていました。そのとき私は『自分の生き方は自分で決めていいんだ』と気が付きました。1996年に選択的夫婦別姓が導入されなくて、本当にがっかりしましたが、自分が結婚するまでにはさすがに制度化されているだろうと思っていました。ですから、結婚は相手あってのことなので、別姓になるかは相手によるけど、私は変えたくはないかなと思っていました」(佐藤さん、以下同)

写真はイメージです(以下同)〔PHOTO〕iStock

夫婦の「違い」を大切にしたい

社会人8年目の2007年、佐藤さんは結婚を決める。改姓する気がなかった佐藤さんは、その旨をパートナーに伝えた。佐藤さんは自分の希望を通すことが簡単ではないことを覚悟していた。パートナーの実家は由緒ある家業を営んでおり、彼は1947年に廃止された「旧家制度」でいうところの“本家の長男”だったからだ。

案の定、パートナーが姓を変えるという話にはならなかった。彼は研究者としてフルタイムで働いていたが、いずれは家業を継がなくてはならず、また、改姓すると旧姓のときの研究実績が紐付けられないため、研究者にとってキャリアの断絶を招くことがその理由だった。

ただ幸いなことに、「夫婦の絆と姓は関係ない。相手を尊重したい」という2人の意思は一致していたため、法律婚を諦め、別姓で事実婚をすることになった。

2010年、2人は住民票を一緒にして、これをもって結婚生活(事実婚)をスタートさせた。佐藤さんは配偶者がいると会社に届け出て、法律婚と同等の結婚祝い金や住宅手当を得ることができた。