アメリカはコンセプトがシンプルな作品が多い

――細田監督の作品もまた、物語やキャラクターデザイン、そして世界観に監督のビジョンが溢れていて毎作品とても楽しみにしています。特に細田監督の構想する架空の世界、『サマーウォーズ』のOZや『バケモノの子』などは、存在しないものをどのようにしてここまで作り込めるのかと、見るたびに気になってしまいます。また、細田監督の脚本にも、「不思議さ」が多く見られるように思います。例えば、『未来のミライ』で主人公のくんちゃんが経験する様々な出来事は、どこからが現実かわからなくなる時があるほど不思議ですが、全て4歳の男の子の視点で描かれていると考えると納得できるのです。子供の頃にしかない感性や視点が詰まっていて、非現実的な出来事が起こっているにもかかわらず、あまりにリアルだとも感じてしまう作品だと思いました。

宮崎監督と細田監督作品のどちらからも感じるのが、「物語の全てのからくりを説明する必要はない」という姿勢です。起承転結はあるものの、お二人の作品には上に挙げたように、不思議さや曖昧さ、解釈の余地があります。そして、物語や世界観にそれぞれの監督の個性が色濃く出ているように思います。これはアメリカのアニメ作品との大きな違いだと感じます。

カンヌ国際映画祭での細田守監督。『竜とそばかすの姫』プレミアではスタンディングオベーションがとまらなかったという Photo by Getty Images
-AD-

アニメーションが大好きな友人達と一緒に、アメリカと日本のアニメの違いについて話すこともあります。その中で気づいたことは、アメリカのアニメ映画の世界観はとても綿密に作り込まれているものの、コンセプトはシンプルで簡潔なものが多いということです。例えば、『トイストーリー』なら、「もしおもちゃが本当に動いていたら?」ですし、『アナと雪の女王』は有名な童話「雪の女王」をモチーフにしています。

しかし、宮崎監督や細田監督の作り出す世界は、ひと言では表せない、それぞれの監督達の「ワールド」があります。例えば『千と千尋の神隠し』には神様もいれば動物、龍もいて、形容し難いにもかかわらず、私たちはその世界を目の当たりにすれば夢中になります。常に主人公に焦点をおいて物語がどんどん進んでいくアメリカのアニメ映画に比べ、日本のアニメ映画は「監督達の描いた世界観に浸る」という楽しみ方ができるのではないかなと感じます。その独特な世界観が、海外でもファンの多い理由の一つだと思います。

たしかに『トイ・ストーリー』シリーズも基本的にシンプルに説明のできる作品だ Photo by Getty Images