孫正義「10兆円ファンド」の資金調達を支えた男「ラジーブ・ミスラ」とは一体何者か?

「ビジョン・ファンド」誕生秘話
井上 篤夫 プロフィール

ドイツ銀行でも、ソフトバンク・ビジョン・ファンドにしても、立ち上げるのが好き。ラジーブは思った。

「これは自分にとっての新たな章だな」

資金調達や税に関することなどにおいて役立ち、付加価値をつけることができる。そして金融の経験と引き換えに、孫から世界のテクノロジーについて学ぶことができると思った。

「何事も適正な場所がある。運命を信じる」とラジーブは考える。

飛行機内での会合で

2016年8月、夏季休暇。家族とギリシアに旅行したラジーブは1、2週間の旅行中に孫に向けた20ページのプレゼン資料を用意した。

まず自分でサウジアラビア、カタール、アブダビにいるドイツ銀行時代のかつての部下にコンタクトを取り、興味があるか調査した。

ラジーブ・ミスラ(Photo by gettyimages)
 

2016年9月、東京でラジーブは孫とこんな会話を交わした。

「アブダビやサウジなどの政府系ファンドからの資金提供を得られるかもしれない。100億ドルから200億ドル規模になる」

セコイア、ベンチマークなど、ベンチャー・キャピタルは規模が大きいといわれているものでも10億ドル程度。ソフトバンクグループによる50億ドルから100億ドル出資に加えて、100億ドル~200億ドルの資金調達ができればかなりの規模となる。

当時ソフトバンクグループで投資に関わっていたのはわずかな人数だった。

1000億ドル(10兆円)に数字が変わったときの逸話をラジーブは打ち明けた。

中東での会合を手配し、孫は東京から、ラジーブはロンドンから現地に飛んだ。飛行機のなかで、孫がラジーブのプレゼン資料を書き換えた。会合がはじまり、ラジーブは孫が300億ドルから1000億ドルに増額していたことに驚いた。

2017年5月、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの初回クロージングを完了した。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの事務所をアブダビ、香港、ロンドン、ムンバイ、リヤド、上海、シリコンバレー、シンガポールに開設した。ソフトバンク・ビジョン・ファンドにはいま400人以上の従業員が働いている。

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