西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開”

明るい未来を切り開くために
西浦 博 プロフィール

未来を切り開くために

私は、そういった流行対策を続けていけば、数年から(長くて)5年くらいの時間をかけて次第に未来が切り開かれていくものと見込んでいる。どこかで頓挫して流行が大きくなるリスクもあるかもしれない。どこかで新しい展開が生じるかもしれない。それでも、大枠は変わらないものと考えている。

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その中で、ずっと「パンデミック」の状態が持続するわけではない。この感染症の流行で問題であったのは(1)感染者が出すぎると医療が逼迫してしまうこと(救える命が救えないこと)、(2)他の疾病と比較すると死亡リスクが十分に高いこと、であった。

予防接種と自然感染が進んで、一定の対策下であれば(1)の医療逼迫が起こらない状態、になり、また、ハイリスク者が十分に免疫を保持し続けるか周囲に防御されることによって(2)の死亡リスクが他の疾病と変わらない、ということになれば、パンデミックは移行期(transition phase)へと進むことになる。そうなれば世界保健機関もパンデミックが終了したことをアナウンスするはずである。

ただし、このウイルスがヒト集団から消え去ることはしばらくなさそうである。そのため、少なくとも医療従事者や高齢者を中心とした接種は続いていくのだろう。また、一部の進化生物学者は既に本感染症は数年から5年程度のタイムスパンで、子どもの病気へと変わっていくものと予測している

このように流行対策のハードルと流行の社会的重大度を少しずつ下げていくことを「テーパリング」と呼ぶことができるだろう。日本語では「先細り」と訳されるが、医療業界では、一部の病気の患者さんの投薬量を時間をかけて少なくしていく際にこの用語が用いられている。そのテーパリングを人口レベルでどのように形作るのか、という命題は、コロナ後の明るい未来をどのように作っていくのか、というものでもある。

ご覧になっていただければわかる通り、その明るい未来は私たち社会構成員が参加しつつ切り開くものである。というのも、予防接種率が高い社会ではテーパリングをより近い未来にすることができるのである。心理学や経済学の専門的知見を動員して接種が特別に強く勧奨される仕組みを必死に考えていくべきだろう。政治が責任を持ってパンデミックのリスクと向かい合えない状態が続くのなら、皆さんと専門家で一緒にこのリスクに対峙して未来を明るく照らしていきたいと思うのだ。

*1 本稿でのブースター接種に関連し、西浦が開示すべき利益相反関係として、西浦はサノフィ社のCOVID-19ワクチンのアドバイザリーボードでブースターワクチンに関する専門家助言を行ったことがあることを申し添える。

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