西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開”

明るい未来を切り開くために
西浦 博 プロフィール

極端に変わることがない近未来

以上の議論から想像いただけるかもしれないが、本感染症のリスクに対峙し続けてきた私から言えることは、接種完了時のイスラエルなどで一時的に見られていたような「ぱっと夜が明ける」ような未来社会が、日本で希望者の予防接種が完了しただけで来ることはなさそうである、ということである。

マスクを外した暮らしができて、普段会わない方と飲食が楽しめて、元の世界に近い接触が返ってくる、というイメージを抱く方も多いと思う。しかし、そのようにリスク認識が一気に社会全体で変わり得る、というような景色をすぐ先の未来に想像することは困難である。特に、現時点で見込まれる接種希望者がほぼ接種済みになるだろう今年11月後半の日本でそのようなリスク状態になることは、残念ながらほぼ期待できない。

 

それどころか、その後もしばらくは大規模流行が起こり得る状態が続き、医療が逼迫し得る状況(積極的治療が出来ない方が生じたり、自宅療養者が溢れかえったりするような、これまでの逼迫状況)が起こり得ると考えている。予防接種だけでは実効再生産数の値が1を上回るからだ。

もちろん、予防接種が進むにつれ、高齢者が最初に防がれ、その次に50歳代、その次に40歳代と次第に接種で防がれていく。だから、本格的な流行拡大が起こるまでの間は、重症患者数は過去と比較して明確に増加し難くなる。

しかし、接種を希望しない者の人口サイズは未だに大規模な流行サイズを引き起こすのに十分であり、そうすると高齢者を含むハイリスク者の間で未接種のままであった者を巻き込みつつ社会全体で感染が拡大し得る状態となる。それは、現状の接種希望者の見立て程度であれば、そのような中で大規模流行が起こると季節性インフルエンザ相当では到底及ばない流行規模・被害規模になり得る状態が継続する、ということである。

もちろん、そういった流行は接種率が高ければ高いほど被害規模を極端に小さくできる。また、すぐにマスクを外して接触を許すのではなく、まだしばらくの間はマスク着用を続けて不要不急の接触を避ける行動制限が緩徐に続くことで流行リスクが下がることに繋がるだろう。

その中で医療従事者や高齢者のようなハイリスク者のブースター接種が十分に行われるのはもちろんのこと、人口内で免疫を持つ者がほとんどの状況に達することができれば、 医療が崩壊するような流行も次第に回避可能となっていく。

ただし、おそらく年単位の時間をかけてそれが起こっていくのだ。

そこに至るまでの道のりにおいても、できるだけ医療逼迫の程度がひどすぎるような状況を回避しながら進み、直接的・間接的に生じる被害者が少なく済む状況を保っていく。繰り返すが、その間、日常生活でマスクは着用しつつ、ソーシャルディスタンスは確保しながらだが、少しずつ、少しずつ、私たちの文化的な社会活動を元の活力あるものに戻していく。

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