西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開”

明るい未来を切り開くために
西浦 博 プロフィール

いま、接種をどうすればいいか

いま、集団免疫閾値による流行終息が簡単には達成困難であり、発病そのものから逃れるワクチン免疫も1年以内に失われる可能性がある。そのような中で「じゃあ、もう自身は打たない」と思ってしまう方も出るかもしれない。結論から先に書いた上で背景要因などを解説できればと思うが、私は以下を主張したい。

(1)自身の予防のために接種することをお勧めしたい
(2)社会の皆で明るい出口を見つけるためにも接種をお考えいただきたい
 

ご自身のリスクについて
デルタ株に対する効果が従来株よりも少し低いことやワクチン免疫が失活する可能性はあるが、現在までに日本を含むいくつかの先進国で用いられているmRNAワクチンの効果は高く、接種者のデータを見ると、デルタ株でも80%以上の確率で発病を防ぐことが知られている。

このレベルの効果は抗原性が変化し得るウイルスに対して類を見ないくらいに高く、免疫が失われるまでの間、接種者は十分に高い効果で守られていることになる。

自身の健康や近しい人のためを考えると、接種をして守られている状態が形作れると良いであろう。今後、社会活動上でも予防接種済みであることでベネフィットを見出せるアドバンテージもあるかもしれない(未接種者だとできないことが出て来る日がくるかも知れない)。

社会全体でのリスクについて
他者のために、社会のために、自身の予防接種が効いている、という考え方である。たとえ予防接種だけに頼った政策で流行を止められなくても、高い接種率の状態だと制御は人口レベルで飛躍的に容易になる。

結果として予防接種はコロナ後の明るい未来を切り開く起爆剤になり得ることは変わらざる事実である。社会構成員の一人として「接種者である」ことは社会の中でのリスクを低減することに繋がっており、そのことを誇りに思っていただきたい。

ただし、現時点においては、感染しても重症化リスクの低い若年成人を中心に、予防接種の希望者は満足な数とは言えない。

例えば、国際医療福祉大学の和田耕治教授らによる調査では20歳代男性の27%、女性の38.7%が接種について「少し様子をみたい」と述べており、50歳代でも男性の18.0%、女性の17.2%が同様の回答をした。

この数字から想像される希望者の水準は、集団でこのウイルスによる感染を防御するには十分とは言えないレベルであり、国が強い施策で流行を止められない現状においては未接種者の多くが自然感染するという帰結を迎えるリスクが極めて高い。

今後、流行や感染に対するリスクの認識が十分に高くならなければ、相当の割合の国民の接種が達成できず、その希望者内だけにとどまってしまう。そして、とても勿体ないことに日本でワクチンが一時的に余ってしまう事態が起きかねない。

ただ、個別事例によって接種困難な事情は認容することが求められ、接種をしない自由も確保されるべきである。そのため、社会全体を予防接種で守るためには、「できるだけ接種しよう」という特別に強い勧奨を行うことが求められる。

そのためには、特別な工夫も必要だろう。たとえば、予防接種後の社会の仕組みに「接種の有無」を組み込むことによって、感染リスクをより低く抑えていく戦略を練ることはできないだろうか。

一例として会社に出勤することや12歳以上の者が学校へ登校するための要件として予防接種を強く推奨することは実質的に可能と思われるし、何等かのイベント参加の要件にすることも可能かもしれない。

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