2021.10.14
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地球から夏を消失させた巨大噴火…インドネシアに巨大火山が生まれる理由

日本との共通点と相違点は?
蒲生 俊敬 プロフィール

地球から夏を消失させた巨大噴火――1257年、サマラス火山

トバ火山は、驚異的な量の噴出物をばらまき、地球環境に多大な影響を与えたことが、古環境の復元研究によって明らかにされています。萌芽期の人類が甚大な被害を受けたことは容易に想像できますが、なにしろ7万年以上も前の出来事なので、はっきりした証拠に乏しいことは否めません。

もっと現在に近い歴史時代に入ると、文字で書かれた記録をもとに、具体的な状況が再現できるようになっていきます。

そこで以下では、過去1000年間に注目することとしましょう。インドネシアではこの間、少なくとも3回の「破局的」とよぶべき巨大噴火が発生したことがわかっています。サマラス火山(リンジャニ火山)、タンボラ火山、そしてクラカタウ火山です。

これらの火山が引き起こした巨大噴火を、一つずつ見ていくことにしましょう。

サマラス火山とは、かつてロンボク島にあった火山です(図4–1a参照)。じつは、この火山の大噴火の時期が確定したのは、ごく最近の2013年のことでした。

それまでは、「1257年に、世界のどこかで、ものすごい大噴火が起こっている。それは極域の氷床コアに火山噴出物の記録がはっきり残っているから確実なのだが、いったいどこの火山なんだろう?」というように、火山探しが続いていました。最近になってやっとその正体が、サマラス火山だったことが判明したのです。

この巨大噴火によって、噴火前は標高が約4200メートルあったと推定されているサマラス火山の山体はそっくり吹き飛び、現在はリンジャニ山(標高3726メートル)に隣接するカルデラ湖として、その痕跡をとどめています。湖のほぼ中央には火口丘が成長しており、トバ火山と似た状態にあります。

リンジャニ山(手前側)に隣接するカルデラ Photo by iStock

13世紀当時のロンボク島を支配していた王国が、この噴火によって壊滅的な被害を受けたことが、古ジャワ語で書かれた古文書(ヤシの葉に綴(つづ)られているそうです)に記録されていました。

その内容を裏付けるための調査が、パリ大学のラヴィーニュ博士を中心に進められ、現地での地質調査や、放射性炭素による年代測定法が駆使された結果、間違いなく1257年にここで噴火のあったことが証明されたのです。

サマラス火山の噴火によって大量の噴煙が成層圏にまで達し、世界の気候に大きな影響を与えました。噴煙の中には、火山ガス(二酸化硫黄)からできた大量の硫酸や硫酸化合物が含まれています。これらは「エアロゾル」とよばれる微粒子をつくり、1〜3年の長期にわたって地球大気を広く覆ってしまいます。

その結果、図4–4に示すように太陽光線が遮られ、地表の気温を低下させます。

エアロゾル微粒子が北極や南極付近に降下すると、極域で年々成長する氷床に記録されます。その氷床をボーリングして、過去の巨大噴火の歴史をたどることができます。

図4–5はその一例で、グリーンランドで採取された氷床コア試料から検出された硫酸塩エアロゾルの含量記録です。サマラス火山によるピークが、目立って大きいことがわかります。

インド洋からは遠く離れた中世ヨーロッパにおいて、この時期の古文書をたどってみると、確かに噴火の翌年にあたる1258年は異常な低温でした。「夏のない年」となり、そのうえ洪水も重なって、農作物に甚大な被害が出たとの記録があります。

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