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地球から夏を消失させた巨大噴火…インドネシアに巨大火山が生まれる理由

日本との共通点と相違点は?

日本列島で、私たちがしばしば経験する自然現象や災害が、インド洋(特にその北東側)に面する国々でも、同じように起こっていることにお気づきでしょうか。

その共通項とは、火山噴火と地震、そして津波です。インドネシアのスマトラ島からジャワ島に沿って、きれいな弧を描いて延びているスンダ海溝(「ジャワ海溝」ともよぶ)。ここで、年間数センチメートルずつ、北向きに沈み込んでいるオーストラリアプレートが、時として大地震や巨大噴火を引き起こします。

ちょうど日本列島の東方海域、千島・カムチャツカ海溝や日本海溝に太平洋プレートが沈み込むことによって、日本列島がしばしば地震や火山噴火に襲われる状況と酷似しています。

本稿では3回の連載で、日本にとって決して他人事ではない、インド洋周辺で起こる巨大地震と火山噴火に焦点を当てます。そこから日本を見つめなおすこともできるかもしれません。

(本記事は『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』の内容を再構成したものです)

「恐るべき火山」を形成するしくみ

インドネシアにはなぜ、たくさんの火山があり、大規模な火山噴火がひんぱんに起こるのでしょうか?

その答えを探るために、インド洋の深海底に注目してみましょう。

インド洋の北東部に、インドネシアの島々を外側からくるむように延びている弧状の深淵、スンダ海溝があります(図4–1a)。スンダ海溝は、インド洋唯一の海溝で、全長4500キロメートルという長さは、海溝のなかでは世界最長といわれます(『理科年表』による)。

このスンダ海溝からインドネシアの島々へと続く地球深部に、恐るべき火山を形成するしくみがひそんでいました。

インドネシアと日本列島の共通項

北上するオーストラリアプレートは、スンダ海溝でユーラシアプレートの下側に沈み込んでいます。海のプレートであるオーストラリアプレートは、その内部に豊富な水を含んでいるので、深部へ沈み込むにつれて、大量の水がしみ出してきます。

この水によって、ユーラシアプレートの下側ではマントルの岩石の組成が変化して融点が下がり、溶岩(マグマ)ができやすくなります。発生したマグマは、地表に向かって上昇し、ついには噴火にいたります(図4–3)。

このような火山のことを、「島弧(とうこ)火山」とよんでいます。海溝と合わせた全体を、「島弧-海溝系」とよぶこともあります。図4–1aから明らかなように、たくさんの島弧火山が、湾曲したスンダ海溝の向こう側に、海溝とほぼ平行して点々と生み出されてきました。スマトラ島からジャワ島、さらにその東へ続く島々からなるインドネシアの国土全体が、まさにこの火山列からできています。

お気づきの方も多いと思いますが、このような島弧-海溝系の火山活動は、日本列島とよく似ています。東北日本から伊豆・小笠原諸島へと南北に連なる日本列島の島弧火山群は、その東側に延びる海溝(千島・カムチャツカ海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝)において、太平洋プレートが西向きに沈み込むことによって形成されたものです。

島弧火山のしくみに興味をお持ちの方は、拙著『太平洋 その深層で起こっていること』の第5章「島弧海底火山が噴火するとき」もご参照ください。そこに掲げた日本列島の島弧火山の生成メカニズム(同書の147ページ図5–1)は、インドネシアの島弧火山にもほぼあてはまります。

ところで、オーストラリアプレートは、インド洋をほぼ北向きに拡大しているので、スマトラ島に接するあたりのスンダ海溝では、図4–1aからわかるように、海溝軸に直角ではなく、斜めの角度で沈み込んでいます。その結果、スマトラ島の地下深部には、図4-1aに白抜きの細い矢印で示したような横ずれ断層(「スマトラ断層」とよぶ)が発達します。

このような断層が、横並びにいくつも並ぶと、隣り合った断層どうしをつなぐように割れ目が形成されやすくなります。こうした割れ目を、「引っ張る力によってできる空間」という意味で「プルアパート部」とよびます。その直下に火山があると、このプルアパート部に大量のマグマが蓄積されていきます。そして満杯になるまで噴火しません。

前回の記事で紹介したトバ火山が、数十万年という非常に長い時間間隔をあけて、超巨大噴火を繰り返してきたのは、大容量のプルアパート空間があるためだろうと考えられています。つまり、大量のマグマが少しずつ溜まっていき、いよいよ満杯になったときに一気に放出され、大噴火にいたるというメカニズムです。

一方、我が国の火山では、地下にこれほど大容量のマグマだまり空間をつくるしくみが存在しないため、トバ火山級の超巨大噴火は起こりにくいと考えられています。

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