インドネシア/シナブン山の噴火の様子(Photo by gettyimages)

過去10万年で最大の火山噴火とは?その規模、鬼界カルデラの5倍超

インド洋から見えてくる日本の自然災害

日本列島で、私たちがしばしば経験する自然現象や災害が、インド洋(特にその北東側)に面する国々でも、同じように起こっていることにお気づきでしょうか。

その共通項とは、火山噴火と地震、そして津波です。インドネシアのスマトラ島からジャワ島に沿って、きれいな弧を描いて延びているスンダ海溝(「ジャワ海溝」ともよぶ)。ここで、年間数センチメートルずつ、北向きに沈み込んでいるオーストラリアプレートが、時として大地震や巨大噴火を引き起こします。

ちょうど日本列島の東方海域、千島・カムチャツカ海溝や日本海溝に太平洋プレートが沈み込むことによって、日本列島がしばしば地震や火山噴火に襲われる状況と酷似しています。

本稿では3回の連載で、日本にとって決して他人事ではない、インド洋周辺で起こる巨大地震と火山噴火に焦点を当てます。そこから日本を見つめなおすこともできるかもしれません。

(本記事は『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』の内容を再構成したものです)

「過去10万年間で最大」の火山噴火

われわれ現生人類(ホモ・サピエンス)は、10万〜20万年前にアフリカで誕生したといわれます。それ以降、現在までのあいだに、人類が体験した最大規模の火山噴火をご存じでしょうか?

その答えは、インドネシアのスマトラ島にあります。スマトラ島の北西部にあり、観光地として有名な「トバ湖」(図4–1a、b)がその現場です。長さ100キロメートル、幅30キロメートルと、琵琶湖の1.5倍ほどの細長い湖です。

巨大な山体(トバ火山)から、大噴火によって莫大な量のマグマが放出されたため、山体が陥没し、その結果できた凹地に天水がたまったものがトバ湖というわけです。このような形成過程を経た湖を一般に「カルデラ湖」とよびますが、トバ湖は世界最大のカルデラ湖で、その最大水深は530メートルもあります。

トバ湖は一度にできたのではなく、噴火を繰り返すたびに形を変え、面積を広げてきたと考えられています。中央の細長い島(サモシール島、湖面からの比高450メートル)は、マグマが上昇してできたもので、“次の噴火”はここで起こるのかもしれません。

火山の冬

トバ火山は、過去100万年のあいだに3回、超巨大噴火を起こしたことがわかっています。84万年前、50万年前、そして直近では7万4000年前です。この3回めの噴火が、ちょうど世界中に拡散しつつあった現生人類を襲いました。当時の地球上には、現在は絶滅してしまったネアンデルタール人やデニソワ人もまだいたことでしょう。

彼ら人類は、たとえスマトラ島から遠く離れていたとしても、等しく甚大な影響を受けたはずです。絶滅しかねないほどの過酷な被害を受けたと考える人もいます。

その理由は、この巨大噴火が、地球の気候を激変させたからです。大量の火山灰が成層圏まで吹き上がり、地球全体を覆いました。すると太陽光の入射が妨げられるので、地表気温が低下します。極域の氷床に記録された過去の地球環境を復元してみると、トバ火山の最後の噴火による硫酸エアロゾルの異常ピークは6年も続いて検出され、年平均気温は一気に3〜5℃も低下したことがわかります。

いわゆる「火山の冬」です。

太陽光を失った植物や動物に壊滅的な被害の及んだことは想像にかたくありません。東南アジアの熱帯林では、森林の消失とともに生物多様性が急減しました。インド中央部では、その後1000年も植生の戻らなかったことが、地層に残された花粉の分析から明らかにされています。

世界的な食糧不足に、人類も容赦なく襲われたことでしょう。疫病が蔓延したかもしれません。

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