転がるDNA、回るDNA、歩くDNA

「オリガミ」の上で分子を操る
藤崎 慎吾 プロフィール

ナノ世界には嵐が吹き荒れている

「動く」DNAオリガミについて説明するには、もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。それは「ナノスケールの世界」が、私たちの暮らす日常の世界とは、いくつかの点で大きく異なっていることです。

例えば私たちは普段、当たり前のように道を歩いていますが、これは地球の重力によって地面に足がついているからこそ、できることです。ところがナノスケールの世界では、重力が目立たなくなっています。他に引きつける力がないと、DNAのような微粒子は、ふわふわ浮いて漂ってしまうのです。こうなると歩くことはできません。

またナノの世界には、いつも「嵐」が吹き荒れています。微粒子が漂っている水などの液体、あるいは気体の分子が、熱によって不規則に動きまわっているのです。この「熱運動」と呼ばれる嵐は、温度が高くなるほど激しくなる一方、液体や気体が絶対零度(−273.15℃)に冷えない限り、やむことがありません。

目に見えるくらいの大きな粒子であれば、動きまわる分子にぶつかられても、ほとんど影響は受けないでしょう。しかしナノサイズの微粒子になると、一定方向からたくさんぶつかられた場合、反対方向へ飛ばされてしまいます。これがくり返されると、微粒子自体も不規則な動きをすることになるのです。

この現象はイギリスの植物学者、ロバート・ブラウン(1773〜1858)が、水中の花粉から出た微粒子を顕微鏡で観察している時に発見したため、「ブラウン運動」と呼ばれています。その原因を解明したのは、かの天才物理学者、アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955)です。

【写真】ブラウン運動の軌跡をシミュレーションブラウン運動の軌跡をシミュレーションした図 figure by Sullivan.t.j at English Wikipedia., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons 拡大画像はこちら

では遠藤さんがつくった動くDNAオリガミの例を、いくつか見ていくことにしましょう。

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