分業化する「マンガ家」…“絵が描けなくても”漫画家になれる時代が来た

漫画脚本大賞運営者インタビュー

「マンガ原作者」と言えば古くは梶原一騎や小池一夫といった文章でシナリオを書く作家のイメージがあったものだが、最近ではマンガ原作を募集している新人賞のほとんどは「ネーム原作」と呼ばれる、コマ割りをしてマルチョンでもいいのでキャラクターの絵とセリフを入れた形式でしか各社受け付けていない。

その数少ない例外が「週刊少年マガジン」と「アフタヌーン」が共催して年1回程度公募し、大賞作品にはマガジン系列かアフタヌーン系列のいずれかの媒体で「連載確約」としている「漫画脚本大賞」である。最新の第5回の応募総数は1656本と、各社の小説新人賞と双璧をなすか、場合によってはそれを上回る競争率の高さとなっている。

とはいえ、簡単に応募できるから数が多いだけなのではないのか? 成果は実際のところいかほどのものか? そもそもなぜ他社はほぼネーム原作しか募集していないのに講談社は文字原作も求めているのか? どんな企画が欲しいのか? ――賞の運営を担当する「週マガ」編集部の土屋一幾に訊いた。

 

なぜ「文字」の「原作」を求めるのか

――「週刊少年マガジン」の新人賞の種類と、そのなかで漫画脚本大賞がどういう位置づけの賞なのかを教えてください。

土屋 マンガの作品を募集しているのは年2回実施している「新人漫画賞」、次いで毎月実施している「マガジングランプリ(MGP)」で、このふたつは完成原稿まで描いて応募してもらうのが前提です。

この2つとは別途「イラストグランプリ」という絵だけで投稿できる賞を毎月開催していて、お話だけで投稿できる賞としては年に2回の「ネーム原作賞」と年1回の「漫画脚本大賞」があります。

漫画脚本大賞の発起人たちがこの賞を作った理由は、このところマンガ業界で原作を募集している新人賞は軒並みネーム原作のもので、文字原作を公募しているものがなく、実は文字でなら書きたい人がたくさんいるのでは? と考えたことにあります。

――作画するマンガ家の都合を考えると、粗くてもセリフとコマ割りと構図のイメージが入っているネーム原作のほうがラクなのでは?

土屋 それは作画をするマンガ家さんにもよるのかな、と思います。ネームがあったほうが作画に集中できていいという方もいれば、文字原作の方が自分なりのコマ割りや演出で表現できるのでいい、という方もいると思います。それに、ネームを描くにはマンガ特有の技能が必要になってきますが、「それはできないけれど、面白い物語を書くことができる」方はたくさんいるのではないかと思います。そういう才能に出会いたいというのも、漫画脚本大賞を始めたきっかけと聞いています。

――2010年代中盤から「小説家になろう」発の作品のコミカライズがさかんで、マガジン編集部でも手がけていますが、ああいう既にある小説をマンガにするのではダメなんですか?

土屋 小説は描けないけれど、原作なら書ける」という方もいると思っています。小説であれば文章の表現力などが求められると思いますが、マンガ原作は文章が発表されるわけではないので、そういう部分がなくても面白ければ大丈夫です。それに、たとえば医者マンガをやろうとしても、医療知識が豊富なマンガ家さんはそうそういないですし、医療小説のコミカライズをしたとしてもその原作者さんとのお付き合いは一作限りのものになってしまうかもしれません。でも専門知識があってマンガを描きたいと思っている方と、マンガ原作者として関係ができれば、編集部としては専門知識がある書き手と長くお付き合いしていくことができる。実際、賞を始めてみると、いろいろな業界に原作者志望の方が想像以上にいらっしゃるとわかりました。

――マガジンの原作付きマンガは企画もの、情報マンガ的なものが強い印象がありますが、そういう方向性ということでしょうか。

土屋 われわれはそんなふうに意識したことはないんですが、外から見るとそうなのかもしれないですね。少なくとも原作付きマンガの方向性が固定されているということはまったくないです。

――専門家が「監修」しているマンガもよくありますが、監修者募集ではダメだったんでしょうか。

土屋 漫画脚本大賞は「『絵が描けない』あなたもマンガ家になれる!」を惹句にしているんです。この言葉が刺さる層に向けた賞なんですよね。つまり、誰かの作品を監修するというサポート役ではなく、自分の作品を書きたい人を求めています。

関連記事

編集部からのお知らせ!

おすすめの記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/