8月24日、東京2020パラリンピックが開幕する。それに合わせて、写真家・映画監督の蜷川実花さんがクリエイティヴ・ディレクターを務めるパラアスリートのグラフィックマガジン「GO Journal」5号が発刊される。これまでに蜷川さんは、9人のパラアスリートを撮影した。蜷川さんが心底、「カッコいい!」と思いながら撮ったというアスリートの写真と、蜷川さんのインタビューを紹介する。

蜷川実花さんはなぜ、どんな思いでパラアスリートを撮り続けているのか… 写真提供/日本財団パラリンピックサポートセンター
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リオで出会ったパラ選手に「撮影させて」

蜷川さんがパラアスリートに初めて会ったのは、2016年のリオパラリンピックのときだった。開会式の解説の仕事で現地へ飛び、空港でスーツケースをピックアップする女性たちを見かけた。

「そのときは何の競技の選手なのか分かっていなかったんです。荷物を取りながら『私、足がないんだからちゃんと持ってよ』『私こそ手がないんだけど』といったことを、仲良く言い合っていて、障がいがあたりまえのこととしてそこにある光景が輝いて見えたのと同時に、そんな自分自身の体験にも衝撃を受けたんです。その瞬間、名刺を持って彼女たちに近づき『今度、撮らせてください!』とお願いしました。その一人が陸上選手の辻沙絵さんでした。

ちょうどその頃、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)から、アスリートの写真を撮って展示できないかというお話をいただいたんです。
でも、ただ展覧会を開くだけでは、もともとパラスポーツに興味のある人にしか届かない気がして。もっと知ってもらうためにはどうしたらいいかを考えたときに、だれでも手に取ってもらえるフリーペーパーにすることで、いろいろな広がりが作れるのではと提案しました。スタイリングやヘアメイクも、いつも一緒に仕事をしている一流のスタッフにお願いし、チームを集めました」

辻沙絵選手。辻選手と空港ですれ違ったことが、パラアスリート撮影のきっかけだった 撮影/蜷川実花

違和感からでもいい、興味を持って

GO Journalの1号は、2017年に生まれた。リオで出会った辻さんを撮影し、表紙にした。その後も陸上・水泳・ブラインド競技など毎号、テーマを決め、資料や写真を見て蜷川さんが「撮りたい」と思った選手に依頼してきた。

「事前にリサーチをしていると、撮る前から、この人とは相性が良さそう、写真はおもしろくなる、というのが、わかるんですよね。最初は、パラアスリートだけでなく、いろいろな人を撮ったほうがいいという意見もありました。でも、まずパラアスリートを知ってもらうのを一番の目標にしようと決めました。」

辻さんは、チュールのスカートや、ハードなジャケットも着こなしている。ふだんの選手としての姿とは違った、カラフルな衣装やメイクが目をひく。

辻沙絵選手 撮影/蜷川実花

「ファッションに寄せたほうが、違和感はあるかもしれないけれど、より多くの方に手に取ってもらえるのではと思いました。お洋服を着せられている感じにならないように、チームのスタイリストと、これが似合いそうとか、どういうところに気をつけるかとか、細やかに話し合いました。1号のときは、ファッションとパラアスリートのバランスがわからず手探りでしたが、回を重ねるごとに、ビジュアルが想像できるようになりました。

障がいをどのように見せるかは、洋服を選ぶときに、意識します。義足や義手のアスリートの場合、どうしたらスタイリッシュに見えるか、みんなで考えながら撮りました。何らかの障がいがあることが、写っていても、写っていなくてもいい。不自然に写さないのも、クローズアップするのもおかしい。

でも撮りはじめたら、そういうことはどうでもよくなって、なんてカッコいい表情をするんだろうとか、なんて凛としたたたずまいなんだろうとか、堂々として強く美しい姿にただ圧倒されました」