『おかえりモネ』視聴率低迷の原因は、朝ドラヒロインに必要な「2つの条件」にある

山本 奈緒子 プロフィール

演技がうますぎた…

が、清原果耶という女優は、若いながら、人間なら誰もが持つ繊細な心の闇を表現することが抜群に上手い女優です。それを武器にここまで上がってきた存在であり、朝ドラヒロインのようにピュアで真っすぐなキャラクターとなると、実はこれまで全くといっていいほど演じてきていませんでした。

そしていざモネを演じたところ……、闇演技があまりに細やかで秀逸すぎて、どうしてもそちらが勝ってしまうのです。たしかにモネは、同僚から「なんか重いよね」と言われてしまう役どころではあるのですが、毎朝視聴者にエネルギーを与えることが責務の朝ドラとしては、モネの成長エネルギーが闇を上回っている必要があります。でも、残念ながらこのバランスが逆になってしまった。

これが私が推測する『おかえりモネ』の不調の要因であり、かつ朝ドラの難しいところだと思います。

またもう一つの、“その女優が今まさに伸び盛りであるか”というのも実はかなり重要な点です。朝ドラとはズバリ、ヒロインの成長物語です。その成長過程で様々に悩み、もがき、戦い、乗り越え、自らの力で幸せを掴み取っていく――。そんな、人がもっとも勢いのある時間を描いているわけですから、やはり演じる女優自身がまさに今そのタイミングにいなければエネルギーは伝わってきませんし、到底、日々元気をもらうということもできないでしょう。

しかし、そんな勢い溢れる時期は人生においてごく短時間です。そして残念ながら、若干この時期を過ぎてしまっていたのが戸田恵梨香だったと思います。

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彼女は『スカーレット』では、陶芸という心の炎が燃えるものを見つけ、その炎が燃えるままに人生を駆け抜けた女性を演じていました。それは女優として憑依的な演技を見せ、視る者を圧倒してきた彼女自身の生き様とどこか重なるものがありました。

ただ彼女は、朝ドラヒロインを演じるには人間が完成し過ぎていたと思うのです。『スカーレット』に出演したときの戸田恵梨香は30歳。少女時代から晩年までを演じるにはちょうど良い年齢でしたが、彼女は子供時代からその芸能活動をスタートさせ、10代半ばですでに人気女優となった人。

そしてその後も、転落することなく長きに渡ってトップを張り続けてきたという稀有な存在です。おそらくその過程では、人よりも多くの濃い人生経験を積んできたことでしょう。

彼女が演じた朝ドラヒロインには、そんな酸いも甘いも知り尽くした貫禄がどうしても出てしまっていた。それゆえ上手いのだけど、こちらも心が湧き立つようなエネルギーをもらえるかというと、ちょっと違う。どちらかというと、「人生とは苦しいものだ。それでも強く生きていかなければいけない」という現実を突きつけられているような気がして、どこか息苦しくなるものがあったのです。

つまり、彼女の演技が上手すぎたことが朝ドラにおいては逆効果となってしまった、とも言えるかもしれません。

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