10代の頃は、お笑いが毎日の活力だった

爪痕を残す――。それが、俳優になって以来ずっと、松本さんにとっての課題だった。「オーディションでも、撮影現場でも、“松本がそこにいた”という痕跡を残せ。とくに芝居は、どんなに小さい役であっても、“松本が演じたからこそ”と思われるような何かを残した方がいいよ」と事務所のマネージャーから言われ続けた。それは、まるで呪いのように。

今でこそ人前で自分ではない誰かを演じる俳優業に邁進しているが、この世界に入る前の彼女は、およそ人前で何かをしようとするタイプではなかったという。

「幼稚園の頃からずっと『おとなしい子ですね』と言われ続けてきました。もちろん友達はいましたが、誰にでも心を開くわけではなかったです。人や、何か物事に対して、自分から積極的に出ていくほうではなかった。でもだからといって、特に内向的だったわけでもない。どこにでもいる、特に取り柄もない女の子だったと思います」

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でも、そんな松本さんにも、のめり込む対象はあった。「お笑い」だ。大阪で生まれ育ち、ボケとツッコミが交錯する日常を過ごしながら、毎日毎日身を削って笑いを生み出すプロの姿に癒され、励まされ、それは「明日も頑張ろう」と思う活力になった。
「とくに好きだったのは、ジャルジャルさんです。お笑いの中でもコントが好きで、一人行動は得意だったので、自分一人で劇場に行けるぐらいの年代になると、ファンクラブに入って、一人で劇場に足を運んでいました」

撮影/山本倫子