南極での科学研究
南極の科学研究の中心を担う存在として、観測基地があります。映画で取り上げられたことなどもあり、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。日本には、昭和基地・ドームふじ基地・みずほ基地・あすか基地という4つの基地があり、このうち昭和基地には継続的に観測隊が派遣され、常に人が滞在しながら運営されています。

昭和基地では、一体どのようなことが行われているのでしょうか? 観測隊員の仕事は大きく分けると、設営と観測の2つです。
設営とは、基地の機能を管理したり物資を輸送したりすることで、南極という過酷な環境でも安全に生活や観測をできるようにするために行われます。南極では、電気も水も自分たちで作り、また何かトラブルがあっても自分たちで解決しなければなりません。そのため、食堂や病院から、発電所やガソリンスタンドまで、社会に必要な施設は一通り必要になります。隊員全員が協力して、これらの施設を維持管理しているのです。
もう一つの仕事は観測です。南極では、設営・観測活動を除けば人間の活動はほとんど行われておらず、自然環境はそのまま残っています。そのため、南極の観測を行うことは、地球環境を知るうえでとても大事になってくるのです。一部を挙げるだけでも、降水量や日射などの気象の観測、地形の観測、地震の観測、ペンギンなどの生態系調査、オーロラの観測といったように、地球の内部から宇宙まで多岐にわたっています。
その中でも重要な観測の一つに、オゾンホールの観測があります。これについてもう少し詳しく見てみましょう。
オゾンとは?
そもそもオゾンとは、酸素原子が3つくっついた気体で、酸素分子(酸素原子が2つくっついた、いわゆる“酸素”)に紫外線などが当たるとできます。このオゾンの大部分は、成層圏(高度10~50km)に存在しており、これがオゾン層と呼ばれています。オゾンは有毒な気体ですが、同時に紫外線を吸収するはたらきもあるため、オゾン層は地球上の生物を有害な紫外線から守ってくれています。

ところが南極上空においては、南半球の冬~春にあたる8月頃から、11~12月頃にかけてオゾンの量が極端に少なくなる現象が見られます。これがオゾンホールの正体で、オゾン層に穴の開いたような状態であることからこのように呼ばれています。その結果、地表に有害な紫外線が届き、皮膚がんなどの病気を引き起こしてしまうと言われています。
では、このオゾンホールはどのような仕組みでできるのでしょうか?
オゾン破壊の原因はフロンという物質にあります。フロンとは、炭素とフッ素、塩素から成る化合物のことで、以前は冷蔵庫やエアコンの冷媒や電子部品の洗浄剤として用いられていました。
フロンに紫外線が当たると、塩素原子を生成します。この塩素原子は反応性が高く、成層圏のオゾンの分解を触媒します。触媒とは、自身は変化せずに化学反応を進めることです。つまり、オゾンだけが分解されて塩素原子はなくならないのです。そのため、1個の塩素原子だけでも数万個のオゾン分子を連鎖的に破壊するはたらきを持ちます。つまり、もともとは人間の活動によって生じたがフロンがオゾン層の破壊を引き起こしているわけです。