日本がリードする反素粒子の研究
素粒子と反素粒子の間になぜ違いが生まれたのか。この仕組みを世界で初めて実験で明らかにした現場が茨城県つくば市にあります。高エネルギー加速器研究機構です。始まったばかりの宇宙で起きていたことを実験室の中で再現しました。

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直径3キロものトンネルの中にリングがあり、ここで、ほとんど光の速さまで加速した素粒子と反素粒子をぶつけるという実験を行っています。調べたのは、素粒子と反素粒子が衝突した後に、一瞬だけ生まれる「B中間子」という粒子です。この粒子の変化を調べたところ、「反B中間子」と違っていることがわかりました。
つまり、単に鏡に映したものだと思われていた素粒子と反素粒子の「ほんの少し」の違いは、この一瞬だけ生まれる粒子の変化の仕方やタイミングのズレであることがわかったのです。
ついに、素粒子が10億個に1個の確率で生き残った仕組みが明らかになりました。しかし、これは仕組みのごく一部。全容解明にはさらなる研究が必要です。
300km先の的に当てる壮大な実験
さらなる追求が続くこの分野で今注目を集めているのはニュートリノという素粒子です。宇宙に膨大な数があるため、もしこの素粒子でCP対称性の破れが確認されれば、謎の全容解明へ大きな一歩となります。この実験でも日本が先陣を切っています。

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それは例えるならニュートリノの矢を放って、300km先の的に当てるという壮大な実験です。