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地球人の科学が「宇宙人の平均」よりも遅れている「たった1つの理由」

太陽が2つあると毎日がこんなに大変!

今年の6月25日、アメリカ国家情報長官室は、2004年11月から今年3月までに寄せられた「明らかに異常な動き」をしている飛行物体についての144件の報告の大半を「正体について確かな結論を出せない」と発表した。未確認飛行物体(UFO)である可能性を明確に否定しなかったことで、世界が騒然となった。

かと思えば7月には、イギリスの富豪リチャード・ブランソンやAmazon創業者ジェフ・ベゾスら民間人が次々と有人宇宙飛行に成功し、地球人のほうも宇宙との距離を縮めている。もしかしたら、「その日」は、意外に近いのかもしれない――。

これは、そう遠くない未来に、太陽系から遠く離れたところに建設された、天の川銀河の宇宙人が集う「惑星際宇宙ステーション」を、地球人代表の一人として訪れたあなたが遭遇した、貴重な体験の記録である。

【イラスト】宇宙ステーションgraphic by gettyimages

奇妙なカレンダー

宇宙人との交流、そして全宇宙共通のコモンセンスという新たな発見を経験したあなたは、続いて「惑星際宇宙ステーション」で行われる惑星際シンポジウムに参加することにしました。

シンポジウム開始時間までを、お土産を売っているショップで過ごすことにしました。なにしろ、家族や職場の仲間や友人はもちろん、ふだんは没交渉の知人からもお土産を頼まれていたのです。膨大な商品と店内の喧騒の中であなたは、散々迷いましたが、かさばらず、見栄えのするカレンダーが最適だと思いつきました。

さて、どれにしようかと手に取って、めくってみたりしているうちにあなたは、どうもいろいろと、おかしなカレンダーが多いことに気づきました。とくに目につくのは、日付を表す数字(らしき文字)が、月の半分だけ、2つダブって書かれているものです。

【図】カレンダー日付がダブっている奇妙なカレンダー・地球人向け仕様

「すいません」と、あなたは勇気を出して、店員に声をかけました。振り向いたのは、『スター・ウォーズ』のヨーダのような顔の、いかにも偏屈そうな人でした

「どうしてこちらのカレンダーは、こんなに変わっているものが多いんですか」

店員はじろじろとあなたを見て、こう答えました。

「うちのカレンダーが変だとでも?」

「はい、できれば普通に使えるカレンダーがほしいのですが」

「では、あなたがお使いのカレンダーを見せていただけますか」

バッグから手帳を取り出してカレンダーを見せると、店員はしばらく眺めてから、ふん、と鼻を鳴らしてこう言ったのです。

「このカレンダーが普通だと思っているあなたのほうが、よっぽど変ですね」

温厚なあなたもさすがに頭にきて、思わず言い返しました。

「それは失礼でしょう?」

すると店員は、薄笑いを浮かべながらこう聞いてきました。

「では聞きますが、あなたたちの惑星には太陽はいくつありますか?」

 

星の半分以上は「連星」である

地球人全体ではどうかはわかりませんが、少なくとも日本人には、「太陽が1つ」であることは普通だと思っている人が多いように私は感じています。普通とは、少なくとも50%以上の確率があることだとすれば、ある惑星が回っている恒星、つまりその惑星にとっての「太陽」が1個であることは、まったく普通ではありません。

すべての恒星の少なくとも半数以上は、「連星」と呼ばれる、2個の星の組み合わせで存在しているのです。みなさんが夜空を見上げたときには1個の粒にしか見えない星は、じつは半分以上が連星ということです。

連星とは、基本的には、2つの星がお互いの「重心」を回っているものです。また、連星には3つからなる三重連星や、それ以上の場合もあるからです。

三重連星の場合は、3つが同じように回りあうということにはならず、2つの星のペアの周囲をもう1つの星が回ったり、2つの星のペアがもう1つの星の周囲を回ったり、ということになります。これは有名な「三体問題」にも関係していて、3つのものが連動すると安定せず、1つが弾き飛ばされたりするためです。

【図】お互いの重心を回るパターン、三重連星のパターンお互いの重心を回り合うシリウスの連星(上)と、2つの星のペアがもう1つの星の周囲を回る三重連星(北極星)のパターン 『連星から見た宇宙』より

さらに、2つの星のペアどうしが回りあうと四重連星、さらにその周囲をもう1つの星が回っていれば、五重連星です。では、いったい何重連星まであるのかといえば、2021年現在、地球からさそり座方向に約500光年離れたところにある、さそり座ν(ニュー)星が、七重連星(!)であることがわかっていて、これが地球人の知るかぎり、いまのところ最高記録です。

スペクトル分類でOB型の星は、8割が連星であるといわれています。もしもOB型星を太陽にもつ宇宙人がいたら、地球人などは「えっ、太陽が1個だけ?」と引かれてしまうでしょう。太陽が1個しかないのは、宇宙では特殊な環境なのです。

ブルーバックスを愛読しているあなたは、その程度の知識はもっていました。ヨーダ似の店員に太陽の数を聞かれて、彼が何を言いたいのかもわかりました。カレンダーの多くは太陽の動きにもとづいています。奇妙なカレンダーは、太陽が連星であることに関係しているのでしょう。

そう思うと、失礼なのは自分のほうだったと気づきました。あなたはこう答えました。

「私は太陽が1つしかない惑星から来ました。こちらのカレンダーを買いたいと思います。帰ったらみんなに説明したいので、なぜこういう日付になっているのかを教えていただけませんか」

ヨーダ似の店員はニッと笑うと、あなたに椅子をすすめ、話を始めました。

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