フレンチ・パラドックスの裏付けは「文化」です

考えあぐねていたとき、ふとフレンチ・パラドックスという言葉が思い浮かびました。ステーキ大好き、チーズもしっかり食べるフランス人に心筋梗塞が少ない理由が、食中酒として親しまれている赤ワインにあるというあれです。とすると……、権威に盾突き体制派に属することを潔しとしない彼等を、オリンピックの名のもとに愛国心にも似た団結心に駆り立てるものはなにか。

よくよく考えて、扱いにくい老若男女のプライドが守られ、彼らの情熱を結実させる要素が見つかりました。それは彼らの先祖たちが培い現代に継承されている「文化」であり、文化が形として結実している「文化遺産」に他ならないという結論に至ったのです。癖と魅力が紙一重のフランス人を束ねる説得力に、文化ほど絶大な威力を発揮する言葉はありません。

2024Paris成功の秘訣を文化に見出したのがマクロン大統領とオリンピックの組織委員会だとしたら、フランス人は地球上であっぱれなほど成熟した感性の持ち主たちだと考えざるを得ません。蛇足ですが、私たち日本人が考えている以上に、フランス人に親日家が多いのをご存じでしょうか? それもひとえに彼らの日本文化への憧憬であり、日本文化を現在まで継承してきた私たちを尊重してくれているからなのです。わが国のGDPやGNPの低下など気にしないで、文化大国の矜持で明るい将来につなげようではありませんか。

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オリンピックの成功の秘訣を文化遺産に求めた

フランス観光開発機構」からメールで届いた膨大な資料を読み終え、あんぐりと口を空けて感動の波に飲み込まれている私がおります。フランス好きという贔屓目なしに、アイデア満載でオリンピックの成功が約束されているようで羨ましさを禁じえません。既存の文化遺産を利用して、足りない施設だけを地域住民と相談して新設するとある一行に、共感しない方はいないはずです。

大会組織委員会の執行代表のトーニー・エスタンゲ会長は、「新しいモデルとなるような大会、より持続性を持ち、社会的にコミットし、連帯意識があり、より参加型の大会を開催しよう」と熱意を傾けます。東京の閉会式のはずがパリの開会式のようだったと感じながら映像を食い入るように眺めていて、最後に白いマジックでParis2024と書いた方が次期オリンピック委員会のエスタンゲ会長でした。

東京五輪でトライアスロンの金メダリストたちと記念撮影をするトーニー・エスタンゲ会長 Photo by Getty Images

政治家でもタレントでもなく、彼はカヌー競技でフランスが誇るスポーツの英雄。2000年のシドニー、2004年のアテネと2012年のロンドンの3大会で3冠を達した唯一のフランス人でした。フランスとスペインの国境にまたがるピレネー山脈のフランス寄りのスポーツ一家に生まれ、地元の小さなスポーツクラブご出身とか。優秀なアスリートになるには莫大な投資が必要などこかのお国事情とちがって、とても清々しいですね。