8月20日公開のフランソワ・オゾン監督の最新作『Summer of 85』のスペシャルミュージックビデオでナレーションを務めている磯村勇斗さん。本作は世界三大映画祭の常連にして、世界中から新作を待ち望まれているフランス映画界の巨匠・オゾン監督の映画制作の原点となった小説を映画化し、少年同士の刹那の恋を描いた最高純度のラブストーリーだ。

映画に登場する主人公は、ひと夏の恋と永遠の別れを通して初めて「自分」というものに出会い、小説という自己表現の喜びを知る。磯村さんもまた、10代の頃に映画づくりを通して初めて自分を表現する喜びを知ったという。それから15年、俳優として注目度が増すなかで改めて自覚した、演じることへの思いとは。

Summer of 85
セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳のアレックスは、突然の嵐に見舞われ、18歳のダヴィドに救助される。2人は急速に惹かれあうも、ダヴィドの不慮の事故によって恋焦がれた日々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドと交わした「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いだった――。フランソワ・オゾン監督が、17歳の時に出会い深く影響を受けたエイダン・チェンバーズの小説『おれの墓で踊れ』を映画化。
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初めて自分で作った映画のテーマは「いじめ」

磯村さんが最初に映画の世界に心を掴まれたのは、小学校低学年のときだった。映画好きの父の影響で、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に出会う。磯村さんが生まれるずっと前、1977年に作られた映画だったが、映画を観ているあいだは現実を忘れ、自分自身が未知なる世界の住人になっていた。

「僕がいまお芝居をしているのは、子供の頃の『スター・ウォーズ』との出会いがあったからです。それから暇さえあればいろんな映画を観るようになって……主に洋画でしたけれど。中学に入ると、1歳上の先輩がビデオカメラで映画を撮っていたのに刺激されて、真似して映画を撮るようになりました。台本は作らずに、その都度自分の頭の中に浮かんだイメージを友達に口頭で伝えて、『これをこんなふうにやって』と指示していましたね(笑)」

写真:山本倫子

当時、通っていた学校でいじめがあることに彼は気づいていた。映画を撮ったら発表できることになったので、どうせ撮るなら、身近に起きていることを、メッセージとして盛り込むことができたらいいのかなと考えた。

「ただ、真面目に作りすぎても観てもらえないと思ったので、エンタメ性を盛り込む意味で、笑える、ふざけた要素をふんだんに入れてみました。軽い感じで観ることはできるけれど、その中に、僕としては問題提起を織り交ぜたつもりです。原点である『スター・ウォーズ』の影響でブルーシートを使って合成撮影をしたりとか、やれることは全部やったエンタメ映画ができ上がりました。

最終的に、全校生徒の前で観てもらったとき、すごく拍手をもらえたんです。『楽しかった』とか好意的な感想も多くて、そのとき……14歳だったと思うんですが、はっきりと、『将来は映画の仕事に携わりたい』と考えるようになりました」

写真:山本倫子