撮影/渡辺充俊

望月衣塑子✖五百旗頭幸男「報道の自由を主張する人が何も発言しない」現実

自壊するメディア(3)望月衣塑子✖五百旗頭幸男
いま一番肝の据わった記者・望月衣塑子氏と、最注目の映像作家・五百旗頭幸男がコロナ無策、五輪断行、民意無視で暴走する政治権力に対し、監視機能を果たせない巨大メディアの腐食を撃ち、再生への途を熱く語ったα新書『自壊するメディア』が8月20日発売。
注目の新書から、望月衣塑子氏と五百旗頭幸男氏の対談『権力を監視するメディア再生のために』の一部をご紹介。

「入管問題について長い時間は放送できない」

望月 日本の入管施設の実態は、生命や自由が脅かされかねない人々(とくに難民)が、入国を拒まれたり、それらの場所に追放したり送還されるのを禁止する国際法上の原則「ノン・ルフールマン原則」にも反していると指摘されています。じつに深刻な人権侵害が、入管や収容施設での対応で行われていると思います

五百旗頭 いま明らかに入管政策が厳格化されていて、難民的な存在を日本から排除するという方向に向かっていますよね

望月 被収容者が抗議のためハンストを行う例も多く見られましたし、今年2021年3月には、名古屋入管に収容され、体調不良を訴えていたスリランカ国籍の女性ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなるという痛ましい事件も起きました。

 

五百旗頭 入管がらみの問題って、ローカル局はけっこう番組にしてるんですよ。メ~テレ(名古屋テレビ)がつくった『面会報告』という番組は、名古屋入管に収容された外国人に面会を続ける日本人女性を通じて入管行政と外国人の置かれた状況や、中国人留学生の切実な事情を映し出していました。

また、キー局でもテレビ朝日は『東京クルド/TOKYO KURDS』という番組をやってギャラクシー賞を獲ってました。つくったのはドキュメンタリージャパンの人だったと思います。30分番組でしたが映画っぽいつくりで見ごたえがありました。映画化されて今年7月から全国公開されています。

映画『東京クルド/TOKYO KURDS』公式サイトより

テレビドキュメンタリーも外国人労働者問題を取り上げてはいるんですけど、なかなか社会的なテーマとしてはクローズアップされないという面があります

望月 そうなんですよ。外国人が増えれば増えるほど、他人事感がなくなっていけばいいと思うんですけどね。

五百旗頭 コロナじゃなければ、もう少し関心を集めたんでしょうか。

望月 どうだろう。クルド人のデニズさんが、民事裁判で収容中の暴行について訴え、拘束されている動画を証拠に出し、2019年、「news23」がその動画をそのまま放送しました。すごい反響があった反面、この動画を流した「news23」バッシングが非常に激しくなったらしい。

デニズさんたちが会見して、難民認定されない人たちと弁護士が並んで「入管法改悪に抗議する」と主張したとき、さまざまなメディアが来ていました。

しかし、あるテレビ局の記者の話だと、「news23」でデニズさんのことを報じたときのネットなどの批判的な反応、「クルド人をこんなふうに持ち上げてどうするんだ」「反日」などのバッシングがあり、みんな怖くて入管問題について長い時間は放送できない、と。その記者は社会問題に非常に関心が高いので、番組のなかで30秒で短く出した。そうしたら、やはり批判的なコメントも多かったらしく、彼女は「ネットを含めて組織的にやってるのかもしれないけど、ちょっとびっくりした」と言ってました。

どうしても外国人を差別的、批判的に見る側の反発が強く、テレビ局はどこも及び腰になっちゃうのかなと思いました。排外主義的な人たちの書き込みや嫌がらせが安倍前政権下では一気に進み、分断が続きました。まだその余波が菅政権でも強く残っていると感じるし、日本のコロナ禍で混沌とした政治・社会・経済状況のなかで、人々の不満や鬱積した怒りが、立場の弱い外国籍の方々に向かっている、ある種、不満のはけ口にされてしまっているようにも感じます。しかし、こんな激しい時代になってしまっているからこそ、なんとかしないといけないと感じます。

五百旗頭 政権批判や歴史認識や、さまざまな社会問題に踏み込もうとするときに、「右翼を刺激するべからず」で皆及び腰になるのと一緒ですね。

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