撮影/渡辺充俊

望月衣塑子が語る、メディアが作った“不自然”な安倍晋三氏退任の花道

自壊するメディア(1)望月衣塑子
いま一番肝の据わった記者・望月衣塑子氏と、最注目の映像作家・五百旗頭幸男がコロナ無策、五輪断行、民意無視で暴走する政治権力に対し、監視機能を果たせない巨大メディアの腐食を撃ち、再生への途を熱く語ったα新書『自壊するメディア』が8月20日発売。
注目の新書から、望月衣塑子氏の『安倍・菅政権の罪とメディアの使命』の一部をご紹介。

意図的に流された安倍首相の病院入り情報

7年8ヵ月続いた安倍政権でしたが、2020年の8月28日、ついに安倍氏は辞任を表明しました。

「政権発足以来、7年8ヵ月、結果を出すために全身全霊を傾けて参りました。病気と治療を抱え、体力が万全ではないという苦痛のなか、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民のみなさまの負託に、自信を持ってこたえられる状態でなくなる以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。総理大臣の職を辞することといたします

このように語る、衝撃の会見でした。

Photo by GettyImages

そこに至る経緯の発端は、2020年の6月、定期検診中にかつて患っていた潰瘍性大腸炎再発の兆候が見られたことにあります。会食好きと言われる安倍氏は、毎日のようにステーキやら寿司やらに舌鼓を打ちながら会食していたのですが、徐々に7月の後半ぐらいからは18時になると官邸を出て富ケ谷の自宅に直帰するようになり、記者の間では体に何らかの不調が生じているのではないかと言われはじめていました

 

8月4日には、写真週刊誌「FLASH」が「安倍晋三首相 永田町を奔る“7月6日吐血”情報」と報じると、普段は余程のネタでないと週刊誌ネタで質問をすることがない官房長官会見でも「週刊誌が報道したが、安倍首相の体調に問題ないのか」との記者の質問が続いていました。当初は、官房長官だった菅氏は「連日お会いしているが、淡々と職務に専念しており、まったく問題ないと思っている」などと、安倍首相の健康不安説を打ち消していました

しかし、事態が大きく動きはじめたのが8月17日の慶應病院での検査でした。このときは血液を入れ替える治療も行っていたと思われますが、病院には7時間半も入ったきりでした。

これははっきりと覚えていますが、8月16日の日曜日のことでした。政治部の記者でもない私のもとに、永田町の関係者からメールが届き、「明日の朝の8時半から9時の間に安倍さんが私邸をハイヤーで出て行く。そのまま慶應病院に長期入院するらしい。潰瘍性大腸炎が再発して悪化している」と書かれていました。その前に吐血報道も出回っていたのですが、こうした話が私のような政治部外の者にまで届くのですから、何か必ず意図があると感じました

翌日、安倍氏の自宅前には全テレビ局、それから新聞各社のカメラマンたちがずらっと構えており、たしかに10時すぎに自宅を出て、真ん中のハイヤーに安倍氏が乗車し、前後2台にはSPが乗って、黒々としたハイヤー五台が行列をなして慶應病院に向かっていきました。その様子を民放のテレビ局の記者が生中継しており、「いま安倍首相の乗った車が慶應病院の中に入ってまいります!」とセンセーショナルに入院が報道されました。

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