2021.08.15

「ペーパー離婚」で夫婦別姓に…牧野紗弥さんが直面した「日本で“事実婚の家族”を生きる」難しさ

樋口 可奈子 プロフィール

「子どもが生まれてから、夫のスケジュール優先で私が仕事を調整していました。子どもの送り迎えも私。夫は私がやってと頼んだことをやるのに手一杯で、子どもが学校に持っていくプリントの準備などの『見えざる育児』には全く気づいてくれない。そのために何度もケンカしましたが、ある時夫に『一度、家事育児のすべてを担当してほしい』と頼んでみたんです。今から約2年前、2019年の秋のことでした」

普段やってもいないことを想像し、大変さを推し量るのは難しい。そこで家事育児の丸ごとを体験してもらうことにした。一週間後、夫の口から出たのは「だんだん見えてきたから、もう一週間やらせてほしい」という言葉。夫から見える景色が変わった瞬間だった。これをきっかけに、家事や育児を分け合うことになった牧野さん夫婦。しかし、同時に牧野さんの中では別の思いも芽生えていた。

 

「苗字に所有されている」という思い

夫が家事や育児に積極的に関わるようになってきたのとほぼ同時期に、「結婚・出産後、なぜ自分がモヤモヤしてしまったのか」を考え始めた牧野さん。段々と「家事や育児は女性がやるものだと思い込んでいた自分に気づいた」と話す。いい母、いい妻であろうと、自分を縛っていたのは自分でもあった。思考を巡らせているうちに行き着いたのが「苗字に所有されている」という思いだった。

「これまでもモデルの仕事で牧野姓を使ってはいました。でも、海外ロケに行けばパスポートと仕事上の姓が違うことを思い知らされ、牧野の表札を出していない自宅に私宛の荷物が届かないこともあった。そんな小さな不満が溜まっていたことに、どんどん気づきました」

積み重なった不満は「仕事で旧姓を使っているから」と解決できる問題ではなかった。母や妻としてではなく自分が自分らしくいられるためにはどうしたらいいのか。たどり着いたのは、法律上は離婚をして、戸籍上も「牧野紗耶」に戻ることだった。

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