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# 立ち読み # 医学 # 緩和ケア

「悔いなく死にたい」あなたへ…人生に寄り添う“早期緩和ケア”とは

超高齢社会の「生き方・逝き方」

人生100年、誰もがいずれ病気や老いに直面する時代に、医療は「病気を治す」から「病気とともに生きる」ことへの転換が求められている。キーワードとなるのが“早期緩和ケア”だ。

ベストセラー『死ぬときに後悔すること25』の著者にして緩和ケア医である大津秀一氏の最新刊『幸せに死ぬために 人生を豊かにする「早期緩和ケア」』で描かれる、すべての人が「自分らしく」「幸せに」生きるための未来の医療とは。

最後まで生きる人のための医療

「先生はなんで緩和ケアを専門にされたのですか?」

「医者だったら治す医療に興味を持つのが普通なのではないですか?」

よくされる質問です。最近は緩和ケアに対する理解の広まりとともに、後者の質問は少し減ったかもしれませんが、緩和ケアというといまだに余命わずかな末期がん患者を対象にした医療のイメージが強いですから、なぜ「看取り」の仕事に興味を持ってその道を選んだのかとお思いになる方が多いのでしょう。

しかし、私は看取りを主としてやりたいと思って緩和ケア医を志したわけではありません。私のツイッターのページには、次のような言葉を冒頭に掲げています。

緩和ケア医になりたい。そう言うと「死ぬ人に興味があるんだね」と言われました。もちろん亡くなってゆく肩を支えるのも大切。ただそれ以上に、大切な時間を生きること支えるために緩和ケア医へ。

「生きる人に興味があるんです、最後まで」

私は、生きる人を支えるための有効な手段としての緩和ケアを実践し、広めるために緩和ケア医になりました。

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今は「医療の転換期」

冒頭で触れたように、「緩和ケア=末期」と思われている方は多いです。一般の方だけでなく医療者でもまだそのように信じている人もいますし、日本だけではなく世界的にも同様の傾向が認められるようです。

けれども、緩和ケアが目指すものは末期に限りません。緩和ケアとは、本質的には生活の質を上げるアプローチであり、不安やストレスを抱える方、生きづらさを抱える方々に安心や前向きな心を与えるためのものなのです。例えば、かぜなどのように、時間が経過することで自然に治る病気だったら緩和ケアは必要とはならないでしょう。

しかし、現代医学では完全に治すことができない「慢性病」は数多くあり、また私たちはいずれ老いて様々な機能が低下し、いつかは死を迎えます。医療というと「病気を治すもの」と誰もがイメージしているかと思います。しかし現代の医療は、完治しない慢性病や、そもそも完全に以前の状態に戻すことは難しい老いの問題と向き合っています。

その過程で、「治す」とはまた別のもう一つの重要な考え方である「苦痛を和らげ、心身をより良く保ち、元気に生活できる」ことを支える医療が育ってきたとも言えましょう。それが緩和ケアなのです。

たとえ治らない病気を抱えていても(例えば、老いに伴う高血圧なども完治しない病気です。治らない病気は多く存在します)、苦痛を減らし元気に長生きしたいと思うのが当然でしょう。そのためこれからは、緩和ケアの重要性が増すことはあっても減ることはないでしょう。

病気が治っても治らなくても、質が損なわれない人生を送りたいと考えるのは、多くの人にとって共通の願いでしょう。またこの時に、それをサポートする医療である緩和ケアを「早期から」行うということがとても大切です。ぎりぎりまで痛みを我慢してから、はじめて緩和ケアにかかるのでは遅いのです。

それでは、日々が「痛みとの過酷な闘い」に終始してしまい、人生を豊かに過ごすどころではなくなってしまいます。ので、苦痛や不安を放置せずに早く対処し、医療を通して生活の質を向上させ、元気で長生きするために、早くから行う緩和ケア=「早期緩和ケア」が必要となるのです。「病気を治す」ではなく、「病気とともに生きる」。

「病気を根絶するために闘い続ける」のではなく、「病気を受け止め、残された人生を悔いなく生きるためのサポートをする」。人生100年時代とも言われている今、こうした医療の転換が求められており、「早期緩和ケア」は未来の医療を考えるうえで重要な実践であると私は考えています。

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