人間にとって最も大きな喜びとは?
例えば、成功することと人生がうまくいくことは違う、ということもそのひとつ。社会的地位やお金を手にすることで、人生はうまくいくわけではありません。多くの成功者から感じたのは、そんな強烈なメッセージでした。
それこそ大企業の経営トップに取材するときには、撮影の合間にするすると近づき、よくこんな質問をしていました。
「どうすれば、こんな立派な会社の社長になれますか?」
面白いことに、多くの社長の答えは共通していました。
「社長になりたい、と思わないこと」
社会的地位や報酬を目的やゴールにするような人間を社長に据えてしまったら、会社はどうなるでしょうか。社長というポジションは目的ではなく、会社をより良くする手段。そう考えている人材こそが、選ばれるべきなのです。
そして取材を通じて私は、人間にとって最も大きな喜びとは何なのか、ということについても学びを深めていくことになります。やがてそれは、はっきりと見えていきました。地位でも名誉でもお金でもない。「誰かの役に立てること」です。
私が失業で恐怖を感じたのは、まさにその機会を失ってしまったからに他なりません。「誰かの役に立てること」の価値は、極めて重要だったのです。しかし、このことは意外に知られていないのではないかと私は感じています。
人生がうまくいく、とは、成功すること、やりたいことができること、好きなことができることだと考えている人もいます。しかし、好きなこと、やりたいことができたところで、誰も喜んでくれる人がいなければ、そこにいったい何の意味があるでしょうか。
言葉を換えれば、「ありがとう」と言ってもらえること。それを、より多くの人に言ってもらえるようになること。これこそが、人間にとって最大の原動力になる。私はそう思っています。そして、私自身も「ありがとう」を言ってもらえることをとにかく目指してきたのでした。