35歳になるはずだった夫の誕生日

【8月17日】
この日は夫の誕生日。本当は35歳になるはずであった。実は2年前から、わたしはこの日をとても楽しみにしていた。2年前、わたしは35歳になった。その時夫は言った。
「うわー、四捨五入すると40歳」
そういわれてわたしが喜ぶはずはない。
「ちょっと、四捨五入する意味まったくないと思うんですけど!」
そう言いながらも、あと2年して、夫が35歳になった時、
「ほーら、これであなたも四捨五入したら40歳!」
そう言ってやろうと心に誓ったのだ。ずっとずっと、ひそかに楽しみにしていた。

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なんでまた、35歳の誕生日を待たず、逝ってしまったものか。四捨五入して永遠に30歳かあ……。差ができたものだわ、わたしと。

亡くなってしまった辛さは、ある程度「時」が解決してくれる。そんな時の力に頼りたくなってしまう部分もあるのだけれど、逆に時が流れてしまうのが、とても怖くなることがある。

わたしひとりがどんどん歳を重ね、老いていく。けれど、夫は歳をとらない。いつか、いつの日か、わたしも天に召されて夫と再会できた時、おばあちゃんとその孫のようになっていたらどうしよう?

34歳で止まってしまった夫の年老いていく姿など想像できない。どんどん歳の差がひらくにつけ、どんどんふたりは離れて行ってしまうという寂しさに、今後かられるのではないか? そんな不安がよぎってしまう。なんとも複雑な思いなのである。

それとは別に、こんな思いもある。息子たちが34歳になった時、夫と重ね合わせて見てしまうのだろうな、と。面影を探してしまうのだろうな、と。もう一度会えた、と錯覚してしまうのでは?

その頃にはすっかりおばあちゃんになってしまっているはずだが、口の悪かった夫に馬鹿にされないよう、3人の男の子との格闘の日々にすっかりやつれがちではあるが、心が豊かになれば、おのずと道は開けるだろう。せめて、心に肥料をやるべく、日々精進いたしましょう。

陽一さんの大学卒業の翌年すぐに結婚したふたり。息子たちが陽一さんの年になったとき、面影を探してしまうだろうか…写真提供/杉山晴美