「215兆円」問題
シンゴさんの事例は珍しい話ではありません。
第一生命経済研究所の試算では、認知症の人が保有する金融資産額は2030年頃には215兆円に達する見通しです。
全国各地で「おカネがおろせない問題」が勃発しており、それぞれの金融機関が対応に苦慮しています。そうした背景から、2020年3月、全国銀行協会は各銀行に対して認知症の人の預金を家族が引き出しやすくするための通達を出しています。
シンゴさんが提出したような書類を用意することで、金融機関の窓口は名義人の医療費や介護費の出金について相談に乗るように求めた内容です。
しかし、あくまで使用使途は限定的であり、金融機関によって対応は異なります。原則は、引き出しには名義人の意思確認が必須であり、それが難しい場合には後見人の申し立てが必要なのです。
シンゴさんはこう言います。
「僕のようにならないために、親が元気なうちにお金のことを話し合っておくほうがいいですよ」