そしてこのエピソードを思い出している際、さらに気づいたことがある。自分と同性であるジャスティン・ビーバーに対する嫉妬は「不健康」なものだという意識がどこかにあったのに、女性に対する嫉妬はむしろ「正当」なものだと僕は感じていたということに。

この差はどこからくるのか。それは、嫉妬の対象になる男性には憧れと劣等感を抱いていた一方で、同じく嫉妬の対象になる女性のことはどこか見下していたところがあったからだろう。

これ自体は僕個人の恥ずべき話ではあるのだが、わざわざ記事にしてシェアしようと考えたのは、僕と同じような男性は決して少なくないのではないかという思いがあるからだ。事実、「女性は得だ、楽だ、ズルい」と言う男性を、ネット上のみならずリアルでも多々見てきた。

ここで勘違いしてほしくないのは、嫉妬をしながらもそれを嫉妬と気づかずに怒りをため込む人間は男性だけではないということ。ただ、嫉妬の対象よりも自分の方が社会的・肉体的に力を持っていたりした場合、もしくは自分よりも“下の存在”だと見下している人間に嫉妬した場合、嫉妬はいとも簡単に暴力へと形を変える

そして現在の社会において、そうした力を持ちやすいのは男性の方なのである。

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男性がもつ「加害性」

先日、2020年に静岡県沼津市で起こったある殺人事件の公判が行われた。
報道によると、一方的に想いを寄せ、ストーカー行為の果てに大学生の女性Aさんを刃物で殺害した被告の男(21歳)は、公判でこう述べたという。

「Aさんの幸せな将来と、悲観的な自分の将来を比較して許せないと感じた」

あまりに理不尽で、憤りを感じずにはいられない動機だ。被告の発言からは、極めて身勝手で自己中心的な彼自身のパーソナリティが垣間見える。なぜAさんが幸せになることを許せなかったのか。そこには、彼女に対する嫉妬のようなものがあったことも窺える。

この被告の暴力的な思考は決して男性だけが持ち得るものではないものの、男性の方がこうした暴力的な犯罪を起こしやすいというのは客観的事実である。

警察庁のウェブサイトで公開されている【令和2年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況についてのデータ】を見てみよう。
まず、ストーカー事案の男性加害者は16,295人で、女性加害者は2,482人。男性被害者は2,500人で、女性被害者は17,689人。さらに配偶者からの暴力事案も、男性加害者は62,722人で、女性加害者は19,921人。男性被害者は19,478人で、女性被害者は63,165人。いずれも加害者は男性が多く、被害者は女性が多いことが分かる。

令和2年の【犯罪統計資料】も見ると、殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買及び強制わいせつを指す重要犯罪の検挙者数は男性が6,785人、女性が532人となっている。殺人だけにしぼると男性は668人、女性は210人だ。被害者は男性が507人、女性が416人と肉薄しているが、検挙者数の割合を考えると、男性に加害しているのも男性が多いということになる。