ブランド品、アニメグッズから日本人の技術、キャリアまで買い集める「チャイナマネー」

中流層にまで日本個人旅行が解禁

 7月1日から、中国人の観光ビザの発給基準が緩和された。1年前に、中国人の富裕層を対象にした個人旅行が解禁になったが、年収25万元(約350万円)以上という条件だった。

中国人観光客誘致のためには、街や公共交通機関にあふれる「なんちゃって中国語」表記も正確にする必要がある。

 それが今回、大手クレジット会社が年収6万元(約78万円)以上に発行する「ゴールドカード」の所持していることなどが条件とされた。ビザが発給される対象は一気に以前の10倍の1,600万世帯にまで広がったのである。

 読売新聞によれば、すでに個人観光ビザの中国国内での申請・発給件数は先月に比べて倍のペースで急増しており、その約半分が上海の総領事館で発給されているという。

 日本政府観光局(JNTO)のHPを見ると昨年、日本を訪れた中国人は100万6千人を超え過去最高を記録。金融不況の影響で、他国からの客が軒並み落ち込むなかで、わずか0.6%ながらも前年より伸びている。

「今度、日本へ1週間旅行する予定。化粧品とアニメ系のキャラクターグッズと、デジタルカメラを買いたいと思っています。お金は大体いくらくらい持って行けば足りますか」

「今年の10月に友人と日本へ旅行しようと計画している大学生です。あまりお金がないけど、芸能人グッズを買ったり、美味しいものを食べたいと思っています。一緒に行く友人はアニメ好きなので、秋葉原に行きたいと言っています。安くて美味しい店やディスカウント店など学生向けの店があったら、教えて下さい」

 ネットの掲示板の「日本旅行」のコーナーでは、旅行指南を望むこんな投稿が定期的に寄せられる。

 アドバイスを返すのは、日本旅行を扱う中国の旅行会社であったり、日本を旅したことのある個人だ。間違ってはいないが、ツボはそこじゃないんだが、と思うことしきり。回答者が紹介する、日本の旅行情報が得られるという中国語のおすすめサイトをのぞいた。

人気グループ、嵐が日本観光を呼び掛けるが、果たして効果は・・・。

 日本の情報系サイトの写真を拝借してきたのかビジュアルだけは体裁が整っているが内容がスカスカだったり、通り一遍の情報でお茶を濁していて目新しさも意外性もないものがほとんどだった。

 ちらり見た日本のテレビや新聞の報道では、中国人観光客の購買力に期待はしているが実際のところ、彼らがお金を落とすのはブランドショップやデパート、家電量販店ばかり、のようだ。

 宿泊や食事にはあまりお金をかけていない。日本国籍を取得した元中国人がオーナーという"中国人観光客仕様"にあわせた低価格なホテルに泊まり、味より量と値段重視のバイキング・レストランなどで食事をすませる。買物目的の中国人にはその手軽さがニーズに合致していると言えばそうだが、それでは日本の魅力はいくらも伝わらない。

 観光庁は人気アイドルグループ「嵐」を観光立国ナビゲーターに起用した。嵐は中国人の若い女性たちにも人気がある。上海万博で先月行われたジャパンウィークの各種イベントでは、嵐の映像がたびたび上映された。彼らがたどたどしい中国語を使って日本への旅行を呼び掛ける姿に毎回、黄色い歓声が上がった。

 これはこれで効果がないとは言わないが、嵐への歓声を日本旅行に対する歓声に換えるためには、もっと具体的で、かつ中国人のハートに響くPR活動が必要だろう。

 朝日新聞6月15日付けを見ると、「観光庁は10年度の海外宣伝予算として前年度比1.8倍の90億円を計上」したそうだが、中国人観光客の財布に期待をする人たちにとって効果的であり、ひいては対日感情が向上する予算の使い方をしてほしいものである。

 この欄でも以前に紹介したが、広告がわんさかあふれる上海などの大都市で、たかだか1、2枚交通広告を設置しても「大河の一滴」にすぎない。

 AVなどに出演する女優の蒼井そらさんのツィッターに、本来当局から遮断されているはずの中国からのアクセスが殺到した最近の例ではないけれど、ネットをうまく活用していけば多くの中国人の目に触れることになる。

 地方自治体や個人の店についても同様で、中国語ブログでの情報発信を地道に続けていけば、いつ「中国人アルファブロガー」の目に留まるやもしれぬ。留まってしまえば、「コピペ文化」花盛りの中国語ネットの世界では、頼まなくても増殖していく。ぜひぜひ試して頂きたいものだ。

旅行中に人材捜し

 話は変わるが、中国人観光客が買いに走るのは、ブランド物やメイド・イン・ジャパンのデジタル製品、アニメグッズばかりではない。不動産や会社など「日本買い」の勢いが止まらないが、「日本人買い」も進んでいる。

「今月、中国人の友人たち7人を日本に連れていくんだけど、パートナー探しや人材探しも兼ねた旅行なのよ」

 友人で30代の日本人女性起業家が言う。この手の話をちらほら聞くようになった。彼女が連れて行く友人たちは、日本で言うところの中小企業の2代目経営者や起業家であったり、美容院の個人オーナーだ。

 日本の経験や技術を武器に企業や店の拡大路線をはかろうと、技術者などの日本人プロフェッショナルや日本投資家を本気で探している。業界トップの大企業が日本人を三顧の礼で役員に迎えられるケースはあったし、日本人がキャリアやノウハウを買われて中国企業で働くという話は珍しいことではなくなっている。

 日本人を迎えようという経営者の層がかなり広がっている。富裕層とまではいかないが、中流の上クラス彼らが資金力を蓄え、「日本人買い」を始めているのである。

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