今年7月に、『沼で溺れてみたけれど』を上梓したひらりささんと、『アイドル病』を著した元・地下アイドルで、現在はライターの姫乃たまさん。それぞれ「推す側」と「推される側」を経たふたりの立ち位置から眺めた「沼」を共通項に、得たもの、失ったものなどについてを語っていただきました。

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地下アイドルだった「私の沼」

ひらりさ 姫乃さんのことはアイドル活動時から存じ上げていました。webメディア『AM(アム)』の連載「永遠なるものたち」の語り口が好きで。今年3月に雑誌「BRUTUS」で小説『推し、燃ゆ』をめぐって対談をできたのもすごく楽しかったです。

今回私が出した『沼で溺れてみたけれど』は、女性たちのお金と欲望にまつわるインタビューエッセイ集なのですが、姫乃さんも『アイドル病 それでもヤメない29の理由』で、29組のアイドルの方にインタビューしてますよね。ぜひ話を聞きたいなと思ったんです。

姫乃 いやいや、私こそ、ひらりささんにお話聞きたいですよ。アイドルの「沼」っていうと、一般的には「推すほうの沼」を想像されやすくて『沼で溺れてみたけれど』の「沼」もそちらに近いですよね。ただ、地下アイドルは「やってる人の沼」があって、私はまさにその「地下アイドル沼」にずっとハマってきたんです。

ひらりさ 地下アイドルというのはライブを中心に活動しているアイドルの通称ですよね。姫乃さんはいつから地下アイドルを始めたんでしょうか?

姫乃 16歳で地下アイドルになって、26歳までずっとフリーランスで活動してきました。卒業してちょうど2年が経ちます。

卒業してから地下アイドルをやっていた過労が一気に噴き出して、精神的に限界がきてしまいました。辞めて以降は、ライターをやりながらほとんど闘病している2年間でした。

病気に振り回されてる間に、長年ハマってきた地下アイドル沼からは、少しずつ抜けてきたかな? というタイミングです。卒業したからと言って、長年続けてきた仕事から気持ち的にもいきなり抜けられるわけではないので……。

ひらりさ 『アイドル病』に出てくる人たちも、姫乃さんと同じで「沼」の住人だなあと思わされました。

姫乃 そうですね。私もそうなんですけど、地下アイドルって最初から地下アイドルになりたかった人はあんまりいなくて、「気付いたら、なっていた」っていう人の方が多いので、いま続けている人は辞められずにいる人でもあるんですよね。

辞められないっていうとネガティブに聞こえるけど、『アイドル病』に登場するのは自主的に活動を続けている人ばかりです。沼にハマってるとも言えます。『沼で溺れてみたけれど』の女性たちも、沼にハマってはいるけれど、みなさんポジティブなのが印象的でした。